排出権取引

排出権取引とは

   排出権取引とは、二酸化炭素の排出(CO2 Emission)に関する権利を売買する取引で、排出枠取引とも呼ばれます。企業間では世界中で取引されており、排出権先物もインターコンチネンタル取引所(ICE)に上場されています。個人投資家はこの先物や先物をベースとしたCFDで、排出権相場を売買することができます(日本でも一部の証券会社が扱っています)。以下、排出権相場のこれまでの推移と今後の見通しについて解説します。

排出権相場の推移

   下図はICEヨーロッパに上場されている排出権先物相場の日足チャートです。上場後は2011年半ばまで堅調に推移していましたが、その後は急落を経て2017年まで低迷します。しかし2017年半ばから急上昇に転じ、2019年2月時点で23ユーロ前後で取引されています。

CO2排出権相場

   排出権相場が下落した理由は、リーマンショックユーロ危機を経て欧州の景気が低迷し、排出枠全体が余剰したためです。しかしこれではEU(欧州連合)が目指した温暖化ガスの削減が思うように進みません。そこでEUは新たな政策を導入します。これが相場上昇をもたらしたのです。

MSR(市場安定リザーブ)の導入

   EUではETS(温暖化ガス排出量取引制度)という制度があり、発電所・工場・航空会社などに排出枠を割り当ています。企業は自社に割り当てられた排出枠で足りなければ、余剰を持っている他社から買い取ることになります。この価格がICEヨーロッパに上場されているわけです。

   EUは排出権相場の低迷をうけて、MSR(市場安定リザーブ)という制度を導入します。MSRは余剰枠を貯金できる仕組みで、19年1月から運用が始まりました。EUは19年〜23年は排出枠の24%をリザーブする計画を立てています。制度の導入で排出権相場が上昇することを見込んだ企業や投資家が、18年頃から活発に買いを入れるようになりました。イギリスの非営利シンクタンクであるカーボントラッカー(Carbon Tracker)は、19年平均で35ユーロ、20年には40ユーロに上昇すると予想しています。

今後見通し

   EUは排出権相場を一定以上の水準に保つことで、化石化石燃料から再使用可能エネルギーへの転換を促したいと考えています。ただし急激な上昇も弊害があるため(電気料金の値上げなど)、カーボントラッカーではここ数年で50ユーロ以上が定着することは考えにくいとしています。

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