ユーロ危機
ユーロ危機とは
ユーロ危機(Euro Crisis)とは、2009年秋から2010年春にかけて起こったユーロの急落を指します。その原因はユーロ圏で信用不安が広がったことでした。広い意味ではこの信用不安そのものをユーロ危機という場合もありますが、ここでは為替相場やFXの視点から、狭いほうの意味として解説します。具体的には下のグラフのAからBまでを中心とした期間が該当します。この間、ユーロの対ドル相場は1.5ドルから1.19ドル水準まで21%も下落したのです。
ユーロ危機の原因
ユーロ危機の発端は2009年にギリシャで政権が交代したことでした。この時、ギリシャが国家財政を粉飾していたことが明るみに出たのです。ギリシャは1981年に欧州連合(EU)に加盟し、2001年にユーロを導入していますが、その前提として一定の財政条件を満たしている必要がありました。しかしギリシャは国家ぐるみで虚偽の報告を行って審査をクリアしていたわけです。
このことが発覚して、ユーロに対する信用は傷つきました。当時市場で盛んに話題になったのが、ギリシャがユーロを離脱して独自通貨に戻るのでないかという推測でした。実際、緊縮財政を強いられた国民の不満は強く、ギリシャ国内でもそうした声は少なくありませんでした。そしてこの話題は、ユーロ自体が内包する重大な問題点の指摘へと発展していきます。すなわち、中央銀行と通貨は一つでも金融政策は各国バラバラという問題。このため、ユーロという壮大な実験は失敗し、結局は崩壊するというエコノミストさえいたのです。ユーロ崩壊というブラックスワンが現実味をもって語られた時期でした。
一方、ギリシャの財政がひっ迫していることが発覚したことで、デフォルトが懸念される事態となります。当時、ヨーロッパの金融機関は大量にギリシャ国債を保有していましたから、ヨーロッパ全土を巻き込んだ信用不安に火がつきます。そしてアイルランド、イタリア、スペイン、ポルトガルなど(PIGS)の国債も不安視されるに至り、広い意味でのユーロ危機へとつながっていくのです。
ユーロ危機の収束
ユーロはこうしたことを背景に約7カ月もの間、下落の一途をたどりました。しかし、ドイツなどがギリシャは絶対に離脱させないと表明し、EUは約11兆円にものぼる資金援助を決定。この結果、市場心理は最悪期を脱出し、投機筋の買戻しも手伝ってユーロ相場は急反発することとなるのです。