1)仮想通貨とは
仮想通貨は、インターネット上で流通している一種の電子マネーです。ビットコインが代表的な銘柄ですが、他にも多くの銘柄があり、技術的な仕様が少しづつ異なっています。
呼称の変遷
仮想通貨という呼称は英語の Cyber Money に起因しています。ビットコインが誕生したころはこの言葉が一般的に用いられていましたが、その後に暗号技術を用いた電子資産が普及してくると、米国ではより広い意味で Crypto Assetes という言葉が用いられるようになりました。この流れを受けて、日本の法律(金融商品取引法等)でも「仮想通貨」から「暗号資産」という言葉に置き換えられました。ですので、現状ではビットコインを指す言葉としては、暗号資産が正式名称、仮想通貨は通称ということになりますが、当サイトでは仮想通貨を用います。
仮想通貨のはじめ方
仮想通貨は、インターネットをインフラとしていますので、インターネットにアクセスできる環境があれば、一定のアプリを使用することで仮想通貨の送金や受け取りを行うことが可能になります。このアプリをワレット(Wallet)といいます。ただ、ワレットを安全に使いこなすには、仮想通貨やIT技術に関するある程度の知識が必要です。そうした知識がないとか、てっとり早く投資を行いたいという場合は、専門業者に口座を開設する方法が近道です。
仮想通貨の実用的機能
ワレットを使って直接的に参加する場合であれ、業者に口座を開設して間接的に参加する場合であれ、仮想通貨のネットワークに参加している者どうしは、簡単に送金(言い換えると所有権の移転)を行うことができます。この仕組みを利用して、物品やサービスの代金決済に仮想通貨を使うことができます。仮想通貨で支払えるお店は、日本ではまだ多くありませんが、海外では欧米を中心にどんどん増えています。また、送金手段としても大いに利用価値があります。友人がネットワークに参加していれば(直接でも間接でも)、24時間いつでもお互いに送金することができます。
投資対象としての仮想通貨
上記のような実用面に加えて、仮想通貨は投資や投機の対象としても注目されています。というのも、短期間のうちに大きく値上がりしたことで大金を手にした人が続出したからです。また値動きが激しいので、短期的な売買益を狙うこともできます。下図はビットコインのドル建て価格で、2016年1月から2020年7月までを示しています。当初の価格は425ドルほどだったのですが、2017年12月には一時2万89ドルまで上昇しています。この間の値上がりは約47倍にもなります。特に2017年の高騰はすさまじいものでした。
仮想通貨と法定通貨
円やドルなど、普通の通貨は国が法律を定めて管理しています。これを法定通貨(Fiat Currency)と言います。一方、仮想通貨は民間で生まれた私的な通貨です。例えば観光地などに行くと、地域を限定して使える疑似通貨の例が見られますが、仮想通貨は電脳空間における疑似通貨と言えるでしょう。ネット上には国境がありませんから、全世界で通用するというメリットがあります。そのため、外国と物品の売買をする場合は非常に便利です。両替の必要がなく、送金手数料も非常に安い。しかも24時間いつでも個人間で送金が完了してしまいます。そうしたことから、第2の通貨として期待されているわけです。
仮想通貨の法規制
日本では、「資金決済法」という法律でいろいろな決済手段を管理しています。例えば、クレジットカードや電子マネーなどが対象ですが、仮想通貨も2017年4月に規制対象となりました。さらにその後、同法は内容の一部が手直しされて、2020年5月から改正施行されました。この改正の時に、仮想通貨は暗号資産という名称に変更されています。セキュリティトークンと呼ばれる仮想通貨の仲間も規制対象に加えられて、法律上の概念が広がったためです。暗号資産は、資金決済法によって、財産的価値がある資産と認められているのです。
ちなみに、暗号資産という呼び方は、欧米で使われている「Cryptoasset」に由来しています。また、仮想通貨のことを暗号通貨とも言いますが、これは「Cryptocurrency」から来ています。英語で暗号(文)をCryptographといい、どちらもそこから派生した言葉です。仮想通貨の仕組みには暗号技術が多用されているからです。
- 法規制については「6)仮想通貨投資の法規制」で詳しく解説しています。
仮想通貨の起源
1.ビットコインの誕生
最初の仮想通貨と呼べるものは、ある論文から生まれました。この論文は、暗号化技術に関するとあるメーリングリストに投稿されたものです。2008年、米国でのことでした。投稿者はサトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)と名乗る人物。日本人っぽい名前ですが、真実は今も不明です。PDFで投稿された論文の名称は「ビットコイン:ピアツゥピア電子通貨システム(Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)」というものでした。
この論文は、中央銀行のような管理者がいなくても通貨を流通させることは可能か、ということをテーマにしていました。サトシ・ナカモトは、その後もメーリングリストにアイデアやプログラムのソースコードを投稿し、徐々に興味を持つメンバーが増えていったようです。そして翌2009年、そのグループによってビットコインが産声をあげたのです。
- メーリングリスト…メーリングリストのサイトに行くと、様々なテーマがリストアップされています。気に入ったテーマが見つかればメールアドレスと適当なハンドルネームを登録。するとメンバーの誰かが投稿するたびに、他のメンバー全員に同報されるという仕組みになっています。同じ趣味や仕事を持ったメンバー同士で情報交換する場が、メーリングリストです。
- ピアツゥピア…略してP2Pとも書きますが、インターネット上でパソコンやスマホがお互いに網の目のようにつながった状態を言い表した言葉です(下図右)。従来のネットワークでは、中央にサーバーがあり、各デバイスは放射線状にサーバーと結ばれていました(下図左)。この形態のネットワークでは、サーバーを管理する者がいますが、P2Pでは管理者がいません。各デバイスが同じアプリケーション(ソフトウェア)をインストールしてコミュニケーションを行います。
2.初の決済事例
ただし、当初はグループの中で行われた実験的な試みで、通貨としての価値は持っていませんでした。しばらくの間は、暗号技術や通貨機能の検証が続けられていたのです。そんな時、あるメンバーが「誰か僕のビットコインとビザを交換しないか」という一文をメーリングリストに投稿したところ、このジョークに応じるメンバーが現れ、実際にビットコインとビザが交換されたそうです。これこそビットコインが初めて決済に使用されたケースだと言われています(今でも、関係者はピザを食べてこの日を祝うそうです)。
3.発案者のその後
そうした段階を経ながら、ビットコインの保有者は徐々に広がっていき、現在の状況へと発展していきます。ところで発案者であるサトシ・ナカモト氏はどうなったでしょうか。彼(?)は途中からこのプロジェクトを他の人にまかせ、フェードアウトしてしまったようです。結局のところ、この人物は特定されていません。ただ一つ言えることは、約100万BTCのビットコインを所有しているらしいということです。これは2017年5月時点の相場で2000億円に相当する額です。論文投稿から10年弱で、巨額の富を築いたのです。なお、開発者グループは今でも活動していて「ビットコインコア(Bitcoin Core)」と呼ばれています。
- BTC…ビットコインの単位です。円であれば1円というところ、ビットコインでは1BTCというわけです。ただ、2020年7月現在では1BTC=約100万円となっていて、1単位の価値としてはかなり高額です。そのため、実際に売買する際には、0.1BTCとか、0.01BTCなど小数点以下の注文が可能です。また、電脳マネーであるビットコインには、技術的な最小単位というものがあります。この単位を「satoshi」といい、0.000001 BTC=1satoshiという関係です。
- ビットコインコア…新たに参加した技術者も含めて、ビットコインのソフトウェア開発を担っている集団です。ただ、中心的な人物はいても強い権限を持っているわけではなく、アップデート仕様などは基本的に合議制で決められています。非中央集権的であるというビットコインの特徴です。なお、ビットコインに関係するソフトウェアの中で核となっているソフトウェアも、ビットコインコアと呼ばれます。
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