2)仮想通貨の将来性
前のページ(1)仮想通貨とは)では、仮想通貨のおよそのイメージをつかんでいただいけたかと思います。このページでは、投資対象として仮想通貨はどの程度有望なのか、ということをもう少し掘り下げたいと思います。
仮想通貨が注目される理由
1.新しい社会インフラになる可能性
仮想通貨が広く世間で知られるようになったきっかけは、2017年に起こった価格の高騰です。
この高騰の背景にあったのが、仮想通貨の技術的な革新性に対する期待感でした。仮想通貨は物理的な実体がないので、保管の必要がなく、移動させるにしても、電子的な処理だけで済んでしまいます。そして何よりも、管理者が不要という特徴を持っています。銀行という社会インフラを土台とした現行体制に比べて、あらゆる面でコストや手間を低く抑えることができるのです。
加えて、ネットにつながったデバイスさえ持っていれば、24時間いつでもどこでも、個人どうしで直接送金や決済ができてしまいます。銀行口座を所有している必要がないのです。日本人にとって銀行は身近な存在ですが、発展途上国で銀行口座を保有している人は少数派です。それに仮想通貨は世界共通ですから、両替の手間が不要ですし、為替相場を気にする必要もありません。こうしたことから、銀行システムとはまた異なった、新し通貨の流通システムへ発展を遂げることが期待されているわけです。
2.ブロックチェーンの可能性
仮想通貨の技術的な土台であるブロックチェーンは、仮想通貨以外にもいろいろな経済活動への応用が可能です。例えば、契約行為を伴う取引は、ブロックチェーン技術を使えばかなりオートメーション化することが可能です。ブロックチェーンには、データを改ざんしたり無効にしたりといった不正行為ができない特性があるからです。
また、システムによって契約行為が完了するので、物品やサービスの受発注を省力化することができます。金融分野への応用は既に始まっていますし(参考記事:DeFi(分散型金融))、工場のオートメーション化も期待される分野です。
ブロックチェーン技術の可能性は、仮想通貨の価格自体に直接影響を与えるものではありません。しかし、こうした新しい技術の社会的認知度が向上することによって、同じ技術を使った仮想通貨への期待も高まり、投資人口の増加につながります。特にイーサリアムはこの方面に強い通貨で、時価総額もビットコインに次ぐ規模をほこっています。
3.ビットコインは発行量が有限
仮想通貨の将来性という意味では、上記の二つを挙げることができますが、価格の高騰をもたらした要因はもう一つあります。それは、仮想通貨の代表銘柄であるビットコインの発行量が、有限だということです。このため、将来需要が増加した際に供給が不足になる可能性があるわけです。
ビットコインはもともと非常に限れらた発行量でスタートし、その後はマイニングという作業を通じて少しずつ発行されています。2020年5月時における発行済み数量は約1837万BTCですが、約2100万BTCに達した時点で、新規の発行はストップするように予めプログラムに組み込まれているのです。
将来性に関するリスク
1.規制の強まり
将来性という点では悪くない仮想通貨ですが、リスクもあります。一つは、行政的な規制が強まることです。それ自体は当然のことなのですが、行き過ぎて成長の芽が摘まれてしまうかもしれません。仮想通貨は匿名性が高いため、マネーロンダリング(犯罪収益の洗浄)やテロ資金などに悪用される懸念があります。また仮想通貨の黎明期には、ハッキングや詐欺的行為によって、投資家が被害を受ける事例も多発しました。そのため、世界各国で仮想通貨に対する法整備が進んでいます。規制が必要以上に強くなってしまい、投資家が離散してしまえば価格も下がってしまいます。
2.量子コンピューター
仮想通貨には、取引の安全性を確保するために暗号技術が多用されています。現在の技術では、仮想通貨で採用されている方法で暗号化された情報を解読すること(専門用語で復号と言います)は、極めて困難です。が、それは膨大な計算を要するためです。なので、量子コンピューターが実用化されれば、複合が可能となり、不正行為が可能になってしまうかもしれません。
仮想通貨の長期投資
将来性をある程度織り込んだとして、現状で仮想通貨の価値はどの程度あるのでしょうか。株価には解散価値や期待収益、土地には収益性といった一応の基準があるので、妥当な価格が設定できます。しかし通貨には絶対的基準がありません。2017年のビットコインは、「上がるから買う、買うから上がる」という状態で、まさにバブルでした。また、ビットコインバブルが終わると、別の仮想通貨が急に動意付いたり、悪いニュースが出ると利益確定の売りで急落したりと、仮想通貨市場全体では変動の激しい状態が続いています。仮想通貨の取引を始めるなら、それを承知のうえで始めなくてはなりません。
では、中長期的な保有を前提に仮想通貨へ投資する場合を考えてみましょう。確かに仮想通貨は利便性が高いので、社会に根付いていく可能性は高そうです。実際にヨーロッパでは市民権を得つつあります。しかし株の平成バブルのように、相場の頂点で買ってしまうと10年単位で塩漬けとなる可能性があります。しかも株価や土地など既に社会インフラとなっているものと違って、この先どんな変化が起こるか予想できません。例えば、新しい種類の仮想通貨が出てきて、既存の仮想通貨は価値を失うかもしれません。
ですから、マネーゲームのような状態にある現状で中長期投資を考えるなら、大きく値を下げた時に、安値を拾っていく作戦がお勧めです。そして、中長期を前提としながらも、いつでも対応できるように常に相場にはアンテナを張っておくことです。マスコミや無責任な他人の意見に踊らされず、自身の目で将来性を見極めましょう。
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