為替相場と潜在成長率
潜在成長率とは、生産活動に必要な三つの要素(資本・生産性・労働力)がフル稼働した時に達成できる成長率のこと。景気循環などの外的要因を除いた論理的な経済成長率をさし、その国が本来持っている成長能力と言えます。調査機関によって算出の前提条件が異なるため、どうしても数字にばらつきがでますが、現実の成長率を評価するうえで重要な指標です。
通常、外的要因で潜在成長率を上回る成長が起こると、景気が過熱してインフレや金利上昇が見られます。逆に潜在成長率を下回った状態では資本や設備がフル稼働していないのいで、不景気感が強まります。言うまでもなく、金利上昇は為替相場にとって強気の材料と言えます(参考:為替相場と金利)。
米国の潜在成長率は2000 年代初頭には3%ほどでしたが、2010年代前半には1.1%まで低下しました。その後は持ち直し2018年4月現在で1.7%前後とみられています。過去の米国景気循環をみると、実質長期金利(名目長期金利マイナス期待インフレ率)が潜在成長率を上回ると、景気が転換点を迎えてきました。直近の長期金利が3%弱、期待インフレ率が2%なので、実質長期金利は1%弱。潜在成長率の1.7%を大きく下回っています。今後、長期金利が3%台後半に達すると、実質長期金利が潜在成長率を上回ってきますから、景気を冷やします。その結果、市場は株安やドル安に反応することが考えられます。
◎次のコラム:為替相場の材料|前のページ:為替相場と景気サイクル