為替相場と景気サイクル
景気サイクルとは
景気は良い時と悪い時が交互にやってきます。つまり循環しているのですが、一定の規則性を持つことが知られています。そのパターンは一つだけではなく、現在では4つの景気サイクルが有力です。それらが絡みあいながら景気が良くなったり悪くなったりしているわけです。
もちろん、Aサイクルは好況期だがBサイクルでは不況期という状況もありますが、複数サイクルの好況期が重なることがあります(後述)。そのような時期は景気が強まりますので、経済活動が活発でお金の需要が増えます。すると為替相場は強気相場となります。景気サイクルと為替相場にはある程度の相関性が存在しますから、景気サイクルも為替相場を予想するうえでは重要な要素になります。
景気サイクルは周期の長さによって、(1)キチンの波、(2)ジュグラーの波、(3)クズネッツの波、(4)コンドラチェフの波、の4つがあります。
(1)キチン・サイクル
約40ヶ月の周期を持つ短期の循環です。企業の在庫投資が起因すると考えられ、在庫投資サイクルとも言います。アメリカの経済学者キチン(J. A. Kitcin)により提唱されました。
(2)ジュグラー・サイクル
約10年の周期を持つ中期的な景気サイクルです。企業の設備投資が起因すると考えられ、設備投資サイクルとも言います。ジュグラー・サイクルはフランスの経済学者ジュグラー(J. C. Juglar)により提唱されました。
(3)クズネッツ・サイクル
約20年の周期を持つ長期の景気循環です。建築物の需要が起因すると考えられ、 建築サイクルとも言います。クズネッツ・サイクルはアメリカの経済学者クズネッツ(S. S. Kuznets)により提唱されました。
(4)コンドラチェフ・サイクル
約50年の周期を持つ超長期サイクルです。コンドラチェフの波とも呼ばれ、最も有名な景気循環です。技術革新に起因すると考えられており、第1波(1780-1840年代)は蒸気機関、第2波(1840-1890年代)は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、自動車などです。ロシアの経済学者コンドラチェフ(N. D. Condratieff)により提唱されました。
景気サイクルから見た為替相場
下のイラストは米国のクズネッツ・サイクルとコンドラチェフ・サイクルを重ねて描いたものです(出典:日経ヴェリタス#462)。両者ともに2007年から2010年にかけて底をうち、回復期に入っている様子がうかがえます。これが正しい分析だとすれば、米国は建設や技術革新をエンジンとして長期的な好景気が期待される局面と言えます。為替相場では、資金需要や金利上昇を背景に、ドル相場の息の長い上昇が予想されます。
◎次のページ:為替相場と潜在成長率|前のページ:為替相場と経済政策