ペッグ制
ペッグ制とは、自国通貨の為替レートを特定の通貨に対し一定に保つ制度(固定相場制)をいいます。普通は世界の機軸通貨である米ドルが対象になりますが、その場合はドルペッグ制と言います。ドルペッグ制を採用している通貨の円建てチャートは、ドル/円のそれとと同じになります。
ペッグ制を採用する目的は、主要貿易相手国との間で為替レートを固定化し、貿易収支が為替相場の影響を受けないようにすることです。ただし、為替レートを一定に保つためには、相手国の金融政策に歩調を合わせるなどの必要があり、自由を縛られる弊害があります。現在、サウジアラビアなどの中東産油国がドルペッグ制を採用していますが、これは原油がドル建てで取引されるためです。しかし、中東産油国では米国の金融政策に同調して利下げを行うとインフレ懸念が高まるため、通貨を切り上げるか管理変動相場制へ移行するのではないかとの観測があります。実際に、クウェートは2007年5月にドルペッグ制を放棄しています。
ペッグ制以外の通貨制度
通貨制度には、ペッグ制の他に以下のような制度があります。
通貨制度 | 内容 | 採用国 |
変動相場制 | 為替レートは市場の自由な取引により決まる制度。 | 先進主要国、韓国、フィリピン、ブラジル |
管理変動相場制 | ペッグ制ほど固定化はしないものの、為替レートの変動を一定のレンジ内に保とうとする制度。対象はドルの他に、通貨バスケット制を採用している事例もあります。 | 中国、シンガポール、インドネシア、マレーシア、インド、クウェート、ロシア、アルゼンチン |
カレンシーボード制 | ドルペッグ制の一種ですが、発行に際して米ドル資産の裏づけを必要とする制度。言い換えればドル本位制です。 | 香港 |
韓国やフィリピンも以前はドルペッグ制を採用していましたが、1997年のアジア通貨危機を機に変動相場制に移行しました。中国は、2005年7月、突然に対ドル相場の切り上げを行い、通貨バスケット制による管理変動相場制へ移行しました。その後も徐々に切り上げを続けています。