自動ロスカット

   CFDでは、自動ロスカット(自動ストップロスとも言います)というしくみが義務付けられています。これは、取引で発生した損失が一定の水準に達した場合、自動的・強制的に建玉を決済するというルールです。証券や商品の先物には見られない、CFDの大きな特徴です。もともとCFDが日本に登場する前から、欧米では導入されていたので、日本でも自然に広がりました。

   自動ロスカット制度が導入されていない信用取引や先物取引には、代わりに追証という制度というのがあります。損をしていても、資金を追加すれば建玉はいくらでも維持できるというものです。

自動ロスカットの長所・短所

   自動ロスカットは、業者側のリスくを軽減することがそもそもの目的なのですが、顧客側にとっても良いルールです。追証制度はなまじ建玉が維持できるために、ずるずると含み損を拡大させてしまうことが往々にしてあります。精神的につらいことこの上ありません。いわゆる追証地獄というやつです。

   CFDも先回りして資金を追加しておけば、自動ロスカットは回避できます。ただ、「明日の午前中までに送金しなければ!」という切迫感がないので、そのあたりの判断は比較的冷静にできるわけです。ただ、自動ロスカットにも短所はあります。相場が急変してロスカットに掛かり、そのあとで相場が戻ってしまうというケース。これはもう、仕方がないことと諦めるほかはありません。

維持証拠金と建玉証拠金

   自動ロスカットについては、建玉証拠金と維持証拠金という概念を理解しておく必要があります。これは、実際に取引を行う際、リスク・コントロールと関係するとても重要なことなので、しっかり頭に入れておきましょう。まず、最初に建玉する際に最低限必要な証拠金を建玉証拠金と言います。狭義の意味での取引証拠金は建玉証拠金をさします。次に維持証拠金は、自動ロスカットが作動しないで、建玉を維持するために最低限必要な証拠金のことです。名前を覚える必要はないですが、一般的に建玉に際して必要な証拠金とその後に建玉を維持する証拠金は別、ということは憶えましょう。

   では、簡単な例を考えてみます。A社では、ドル/円1単位(1万ドル)の建玉証拠金を5万円と、維持証拠金を3万円に設定しているとしましょう。もし取引で損失が出ても、1単位あたり3万円以上の証拠金が残っていれば、この建玉は維持されます。逆に3万円を割ってしまうと、自動ロスカットが作動します(細かいルールは業者によって異なります)。

自動ロスカットのバッファー

   ここで注意していただきたいのは、建玉証拠金が5万円、維持証拠金は3万円だから、「最初の証拠金が3/5になったら強制的に決済されるんだな」と勘違いされる方が多いことです。確かに、5万円ぽっきりで取引を開始した場合はそうなんですが、仮に10万円で取引を開始した場合はどうでしょう。つまり、多めに証拠金を入れて取引を始めるわけです(普通はそうなんです)。

   この場合は、5万円損してもまだ大丈夫です(損しているから全然大丈夫じゃないんですが、自動ロスカットが作動しないという意味で)。あくまで、証拠金の残りが3万円を切るまではセーフなのです。極端な話し、100万円の証拠金を入れて1単位の取引を行うのであれば、97万円までの損なら自動ロスカットは作動しないわけです。

業者によって異なる自動ロスカットのルール

   自動ロスカットの基本的なしくみは以上のとおりですが、細かいルールは業者によって違います。例えば、建玉が複数ある場合、建玉ごとにロスカットの計算を行うのか、全体で計算するのか。また、自動ロスカットが作動して決済を行う場合、全ての建玉を決済するのか、一部だけを決済するのかなど。取引を始めるときは必ず確認するようにしましょう。

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