双曲割引の罠

双曲割引とは

   双曲割引(Hyperbolic Discounting)は行動経済学の用語で、「双曲線的に変化する割引」と意味なのですが、それだけでは何のことだが分かりませんよね。以下簡潔にご説明しますが、実はFXにも大いに関係している話しなのです。

双曲線

   まず、こんな質問を考えてみてください。今日は貴方の給料日です。支給額は便宜上100とします。もしこの給料が一日遅延して明日支給されるとすれば、その価値は今日の100に比べて下がるはずです。つまり価値が割引かれる(ディスカウントされる)わけです。逆に言うと、価値が下がる分を上乗せしてもらわないと、割に合いません。ですから、明日支給なら例えば101にしてくれ、ということになります。もちろん、貴方は102じゃなきゃOKできない、と思うかもしれませんが、そこはひとまず置いておいておきましょう。

   次に、この遅延が1日から1週間、あるいは1ヵ月と延びた場合を考えてください。割引率はどれくらいなら妥当でしょうか。結論をいうと、実は大勢の人に対して行った実験の結果から、妥当と思う割引率は直線的ではなく双曲線的に変化する、ということが分かっています。つまり、今日から明日へ1日伸びたときの割引率は、10日後から11日後に伸びたときの割引率よりも遥かに大きいのです。

人の行動は合理的ではない

   何が言いたいかというと、一日という変化がもたらすインパクトは、現在に近いほど大きいということです。100日後が101日後に伸びたところで大差ないというのが人間の心理なわけです。「それはそうでしょう」と大抵の人は思うはずですが、従来の経済学でいうと、両者のインパクトに大差はありません。

   つまり、妥当な割引率は金利相当額(細かい話しをすればそれ以外にもありますが)であって、双曲線的には変化しないのです。しかし人には心というものがあるため、必ずしも合理的に行動できません。それは相場と向き合った時も同じなのです。

双曲割引とFXの関係

   双曲割引が言っていることは、「人間は利益を目の前にするとその確保を優先するので、合理的な判断を下すわけではない」ということ。実は上の実験では、101ではなく102とか105とか言う人もいます。当然、105と答えた人にとっては、「今すぐ手に入る」ということが持つ価値は高いわけです。そしてそのような人は、FXにおいても、早めに利食ってしまうだろうということが想像できます。

双曲割引

   「利食い千人力」という格言もあるように、確かに利益を確定することは重要なことです。為替相場では予想が当ったときに利益を伸ばすことが重要ですが、短期的に利食うことが必ずしもダメというわけではありません。大事なことは早めに利食いを行うのであれば、損切りも早めでなければならないということです。利食いと損切りのバランスが取れていれば、予想の精度を上げることで、利益はおのずと付いてくるようになります。

失敗の事例

   ここまでFXで失敗する理由について解説してきました。以降では、ベテラン投資家でも犯しやすい失敗の事例を挙げておきますので参考になさってください。また、失敗の理由を踏まえた必勝法については「FXの必勝法」をご参照ください。

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