ECB(欧州中央銀行)
ECBの概要
ECBは European Central Bank の略称で、欧州中央銀行のことです。1998年 6月1日に設立され、本部はドイツのフランクフルトにあります。おおむね日本の日銀や米国のFRBに相当する通貨・金融に関する政策決定機関です。欧州連合の統一通貨であるユーロ(Euro)の発行と、その政策金利のコントロールを主な機能とし、ユーロ圏の物価安定を最大の使命としています。1999年1月にユーロが導入されたとき、独仏伊などの中央銀行から業務を引き継ぎ、運営を開始しました。
ECBの特徴
ECBは欧州全域の中央銀行というわけではありません。欧州連合(European Union, EU)にとっての中央銀行であり、そもそも欧州連合に加盟していない国(スイスやノルウェー)にその政策は及びません。さらに言えば、欧州連合には加盟しているけれどユーロを導入していない国(イギリスやポーランド)に対してもかなり限定されます。なお、ECBには欧州連合参加各国が出資しており、ドイツの18%を筆頭にユーロ圏参加国が約7割を構成しています。イギリスなどの非ユーロ圏も3割を占めますが、基本的にECBの運営にはかかわっていません。
ECBの政策スタンス
ECBはドイツ連邦銀行(ドイツ中銀)の流れを汲んでおり、そのためインフレに対する警戒感はFRBや日銀よりも強い傾向があります。FRBが雇用と物価の両にらみで金融政策を決めるの対し、ECBは物価の安定により重点を置いていると市場関係者は見ています。ただ、明確なインフレターゲットは定めておらず、「2%以下であり2%近くにする」とやや曖昧な表現を採用しています。
また、ECBはユーロ圏の政策金利を決めることはできても、財政に関する権限は持ちません。財政政策については、あくまで参加各国の当局や中央銀行が決定します。リーマンショックに対して米国は政府、財務省、FRBが一体となって対応したのに比べ、ECBは参加各国の財政状況や政府の考え方も一様ではないため、その対応には限界がありました。非伝統的手法にも慎重でしたが、2015年1月、日本・米国に継いでQE(量的緩和策)の導入に踏み切っています。
FXとECB
ECBが決定するユーロ圏の金利はユーロ相場に大きな影響を与えます。最高意思決定機関である理事会の結果と、総裁記者会見は要注意です。理事会はECBの首脳6人(総裁、副総裁、4人の専務理事)と各国中央銀行で構成されます。首脳は一人一票の投票権を持っていますが、中銀総裁の投票権には上限(15票)があり、輪番で投票権が回ってきます。しかし何と言っても決定に影響力を持つのは総裁です。
総裁の記者会見は6週間に1回行われます。以前は毎月行われていましたが、2015年1月から変更されました。現在の総裁はイタリア人のマリオ・ドラギ氏。2011年11月1日にジャン=クロード・トリシェ氏を継いで、第3代目総裁に就任しています。ECB総裁の任期は原則8年となっています。