QE(量的緩和策)
QE(Quantitative Easing)は中央銀行が景気浮揚や物価上昇を狙って行う金融政策の一つで、量的緩和策と呼ばれます。経済活動に供給されるお金の量を増やして、景気を刺激する金融政策です。日銀が2001年3月から5年間にわたって採用した政策が起源ですが、リーマンショック後の景気後退期において先進主要国が採用しました。特にQE1〜3と表現される場合は、一般的にFRBが行った一連の量的緩和策を指します。
日本の量的緩和策
中央銀行は通常、政策金利の上げ下げで金融市場(ひいては景気)をコントロールしていますが、2001年3月当時の日本では実質ゼロ金利となっており、金利の調整余地がありませんでした。しかし金融政策面でも景気を刺激する必要があったのです。そこで日銀は誘導目標を「日本銀行当座預金残高」としました。日銀当座預金とは、市中の金融機関が日銀に預ける無利子の預金で、最低限預けなければならない率(法定準備預金率)が定められています。それを超える部分は出し入れ自由で、主に次のような機能を持っています。
- 金融機関が他の金融機関や日銀等と取引を行う場合の決済に使う
- 金融機関が個人や企業に支払う現金を準備しておく
- 準備預金制度の対象となっている金融機関の義務として
米国の量的緩和策
量的緩和策の採用は、日本のみに留まりませんでした。2007年に入ると、米国では不動産にからんだ不良債権問題が表面化し始めます。いわゆるサブプライム問題です。ここからリーマンショックへつながるた世界的な金融危機では、欧米主要国が軒並み政策金利をゼロ付近まで引き下げました。そこで新たに採用されたのが、日銀がかつて行った量的緩和策と似た政策でした。市場に対して直接に資金を供給するというもので、非伝統的な金融政策という言い方をする場合もあります。特にFRBがとった一連の政策をQEと呼びます。
- QE1(量的緩和第1弾):2009年3月〜2010年3月
(1)米国債、不動産担保証券、政府系金融機関債を総額約1.75兆ドル購入する。 - QE2(量的緩和第2弾):2010年11月〜2011年6月
(1)米国債を総額6千億ドル購入する。 - QE3(量的緩和第3弾):2012年9月〜
(1)政府系金融機関発行の住宅ローン担保証券を月額400億ドルのペースで購入する。
(2)011年9月に開始したツイストオペを2012年末まで継続する。※ツイストオペとは保有証券の平均残存期間を長期化する政策のこと。
(3)政府機関俵、住宅ローン担保証券の償還元本を住宅ローン担保証券に再投資する方針を維持する。
(4)FFレートの金利誘導目標は0%〜0.25%のレンジで据え置く。
これら一連の緩和策によって市中にマネーが供給され、その結果世界中でリスク性の資産(株や土地)の値段が回復し、為替市場では振興国通貨が買われるといった現象が置きました。肝心の米景気も、穏やかながら回復基調をたどりました。しかしいつまでも継続していると、バブルを生むなどの弊害が生じます。FRBは非常に難しい判断を迫られるなか、QE3後に開催されたFOMCでは次のように対処しています。
- 2012年12月FOMC
失業率が6.5%を上回る状況では、(1)向こう1〜2年のインフレ見通しが2.5%を超えないこと、(2)長期インフレ期待も十分抑制されていること、の2点を満たす限りはFF金利を異例な低水準とすることが適切と表明。FF金利誘導目標を0%〜0.25%のレンジで据え置きました。あわせて、QE3の(1)(3)を継続し、2013年1月から米国長期債を毎月450億ドル購入することも決定しています。 - 2012年8月FOMC
事実上のゼロ金利政策とQE3の現状維持を決定しましたが、一方でQE終了を匂わす次のようなコメントが発表されました一経済成長と労働市場の改善が続き、インフレ率が2%(FRBの長期目標)に近づいていることを条件とすれば、2013年の後半に資産買い入れ規模の縮小を開始し、2014年の中ごろには買い入れを終了することもありえる。 - 2013年9月FOMC
このときのFOMCでは、資産買い入れ規模の縮小が決定されるとの見方で市場は一致していました。しかし結果は予想外の見送り。QE終了への第1歩は先延ばしとなりました。