外貨準備

   外貨準備とは、政府・中央銀行が他国通貨や金などで保有している準備資産のことです。何のための準備かというと、民間企業が輸入代金の支払いや借入金の返済などで外貨を必要とする際に、民間だけでは不足する場合に備えるためです。また、通貨当局が為替市場で自国通貨を買う市場介入(為替介入)を行う場合の原資ともなります。

外貨準備の増減

   外貨準備は輸出型経済の国で残高が積み上がる傾向にあります。自国通貨が高くなると国際競争で不利になるため、自国通貨を売って外貨を買う介入を行うことが多いからです。ではそもそも介入の資金はどこから来ているかというと、民間からの借金です。日本政府の場合は、政府短期証券を発行して民間の金融機関から資金を調達します。そして市場で円を売って外貨を購入すると、外貨準備高は増加します。

   一方で、自国通貨が安くなると輸入品が高くなりますから、度を超えるとインフレの原因となります。また、新興国では経済不安などで投資資金が流出し、通貨不安を招くことがあります(参考記事:新興国通貨の下落と円相場)。その場合は介入で自国通貨を買い支えることがあり、外貨準備高は減ることになります。十分な外貨準備がないと自力で通貨不安を止めることができないため、IMF(国際通貨基金)や他国に支援を要請するケースも出てきます。

   このように、外貨準備の残高は市場介入によって大きく変動します。そのため、外貨準備の残高は為替相場と密接な関連性があります。

外貨準備の構成

   IMFによると、全世界の外貨準備高は約6兆ドル(2013年3月末)。そのうち、約62%は米ドルが占めています。以下、23%=ユーロ、3.9%=日本円、3.8%=英ポンド、1.6%=豪ドル、1.5%=カナダドル、0.2%=スイスフランとなっています。

   ただ、現金や預金の形で保有されている部分は少なく、大半は外貨建て証券の形で保有されています。これは債券投資によって収益を得るためです。日本の場合は主に米国債に投資しており、堅実に運用されています。基本的に、債務国の米国のほうが債券国の日本よりも金利が高いので、日本政府は鞘を抜けるわけです。その規模は毎年数兆円になり、一部は国家財源に繰り入れられています。ただ、ドルをいくらで買ったかによって、為替の差損益が発生します。また、米国債の相場が下がればやはり評価損が発生します。ただ、米国債を換金しなければならない事情が生じない限り、実際の影響は少ないといえます。

日本の外貨準備

   日本の外貨準備高は2013年4月末でなんと約1兆2580億ドル。世界2位の規模です。2003年から04年にかけて約35兆円という大規模な円売り介入を行ったことが影響しています。1位はというとダントツで中国。人民元相場が急激に上昇しないように、中国も大規模な市場介入を行っているためです。この2国が他国を大きく引き離しています。日本は堅実な運用を行っていますが、中国は株式や不動産といったリスクのある資産にも投資しています。

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