米長短金利の逆転

長短金利の関係

   通常、金利は長期になれななるほど高くなります。米国の場合、10年ものと3カ月ものの国債利回りを比較すると(1950年〜)、その差は概ね1%〜3%の間で推移しています。最大では4%程度まで拡大することもあります。しかし、差がほとんど無くなったり(フラット化)、ごく稀ですが、逆転してしまったりすることがあります(参考記事:イールドカーブ)。こうした現象は、現在ではリセッション(景気後退)の先行指標になると考えられています。それは次の理由からです。

金利と景気循環

   景気のピーク圏では、短期金利は金融引き締めにより上昇しています。そうした状況で投資家がリセッションの危険性を感じとると、将来の利下げを見越して、長期固定金利での資金運用を増やします。つまり長期債券を買い増します。一方、債券を発行する側、つまり資金を必用としている企業などは、長期固定金利での調達を減らしますから、長期債券の発行量は減少します。

   その結果、長期債券は短期債券に対して相対的に価格が上がり(利回りは低下)、長短金利差は縮小するのです。もし投資家や発行者の確信度が強ければ、逆転に至ることもあります。景気は永遠に拡大し続けることはなく、必ずいつかはリセッションを迎えます。ですから、長短金利のフラット化や逆転は、リセッションの先行指標になりえるわけです。

リセッションと金利

   実際にリセッションに突入すると、金融緩和が始まって短期金利は低下します。一方、長期金利もある程度は下がりますが、短期金利ほどは下がらないので、金利格差は再び広がり始めるわけです。もっとも、債券利回りに反映される市場参加者の行動と、現実の金利水準には相応の乖離があります。なので、長短金利差が景気後退前にどこまで縮小するか、また長短金利差が縮小してから景気後退が始まるまでの期間については一定ではありません。しかし、いつか必ず景気の後退局面は訪れるので、長短金利差の縮小は景気後退の前兆となりえるわけです。

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