中国の不良債権問題

   近年、中国では企業に対する過剰な融資が横行した結果、不良債権が危険な水準に達していると見られています。果たして中国発の金融危機は起こるのか。世界が注目するこの問題を検証します。

急速に膨れる債務残高

   2018年6月末時点で、中国企業の債務残高はGDPの155%に上ります。これは日本のバブル期を上回る水準です。既に2016年の段階で、IMF(国際通貨基金)が警鐘を鳴らしています。当時の報告書によると、総与信額のGDP比が5年の間に30%以上高まった国は歴史上42カ国あり(中国もこれに相当)、そのうち18カ国が5年以内に金融危機に陥っているのです。経済規模の小さな国であれば影響範囲は限られますが、中国は世界第2位の経済大国です。そうなった場合、世界経済にダメージをもたらすのは必至です。

  • 非金融機関の債務残高の推移を見ると、日本では1980年ころから上昇の一途を辿り、1993年ころにピークを迎えます。中国の場合は2008年ころから上昇し始めており、その速度は日本を上回っています。

中国発の金融危機

   融資残高のうち、不良債権の比率は公式統計では1.9%です。しかしその信頼性には問題があり、実態はその何倍にもなるのではないかとアナリスト達は考えています。中小の金融機関ならいつ破綻してもおかしくない、そんな状況なのかもしれません。しかし中小だからと言って軽く見るわけにはいきません。そこから相互の信用不安を招き、貸しはがしや貸し渋りが広がる恐れがあります。仮に取り付け騒ぎが起こると、健全な金融機関であっても破綻に追い込まれる可能性があります。

   もちろん中国政府も警戒しており、対策は講じています。デット・エクイティー・スワップ(債務の株式化)や不良債権処理機関(AMC)の設立などです。また、政府の監督機関も増強しています。しかしもし手遅れになってハードランディングになった場合はどうなるでしょうか。リ−マンショックほどの事態は考えにくいにしても、日本がそうであったように、中国経済の落ち込みは避けられません。そうなると世界の景気にも影響を与え、株式相場、新興国通貨資源国通貨の下落、安全通貨の上昇といった事象を招くと予想されます。中国で地方の金融機関が破綻したといったニュースを目にしたら、何はともあれ嵐に備えることをお勧めします。

過去にあった過剰与信の事例

   ここで参考までに、過去に起こった過剰与信の例を復習しておきましょう。近年では米国で起こった信用バブルの事例があります。いわゆるサブプライム問題です。この時は企業融資ではなく個人に対する住宅融資が過剰だったわけですが、カネ余りを背景としていることは現在の中国と同じです。この時は返済能力のない層にまで融資した結果、不良債権が膨れ、信用収縮を招きました。それが複雑な金融商品と絡んで、最終的にはリーマンショックへとつながったのです。

   また少し古いところでは、1980年代に米国で起こったS&Lの事例があります。これも過剰な融資が信用不安を招き、株式相場や為替相場に動揺をもたらしました。不良債権の処理機関であるRTC(整理信託公社)が設立されたことは、日本のバブル崩壊や現在の中国のお手本になっています。(参考記事:バブル

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