ミセス・ワタナベ
2006年後半から2007年の前半にかけて、為替市場では低金利通貨で資金を調達し、高金利通貨に投資するキャリートレードが盛んでした。この流れの中で、為替市場で急速に存在感を現したのが、日本のFX投資家でした。
特に欧米人の興味をひいたのが、機関投資家でも国際企業でもない普通の主婦。自宅のパソコンで為替を取引し、市場に大きな影響を及ぼしているということに注目したのです。従来は考えられなかった現象でした。海外のメディアはその驚きを込めて、個人を中心とする日本のFX投資家を『ミセス・ワタナベ』と呼んだのです。『キモノ・トレーダー』という表現もあります。
でも、どうしてワタナベなんでしょう。スズキやタナカのほうが一般的では?。実は『ミセス・ワタナベ』は英国のメディアを中心に登場したのですが、もともと英メディアでは日本人の主婦を話題にするとき、”典型的な貯蓄家”とか”家計の財布を握っている人”とかのキャラクターで、ワタナベさんを登場させるんです。それがなぜワタナベなのかまでは分かりませんが。記者にとっては典型的な日本人の名前だったんでしょう。英国では保守的な個人投資家の代名詞として『アガサおばさん』を使うようです。
FX投資家の平均像
金融先物取引業協会が、FXの経験者男女1千人を対象にアンケートを実施しています(2018年・個人が対象)。その結果を見ると、日本のFX投資家の姿が見えてきます。
- 男女比…男性:76.3%、女性:23.7%
- 年齢…20代:12.4%、30代:33.0%、40代:28.7%、50代:10.0%、60代:13.0%
- 利益を出した人(2017年1年間)…男性:60.9%、女性:58.2%
- レバレッジ…5倍未満:31.4%、5倍以上10倍未満:23.8%、10倍以上:44.8%
- 取引期間…1日未満:3割強、1日以上1週間未満:約2割、1週間以上:5割弱
このアンケート結果で注目すべき点は、利益を出した人が年齢や男女によってバラついていることです。そこでもう少し詳しく見ていきましょう。全体平均は上記のとおり、男女とも6割前後の人が利益を出していますが、最も比率が高かったのは30代男性でした。これはまぁ理解できますが、次が60〜70代の女性。逆に最も損をした比率が高いのは60〜70代の男性でした。50代の男性もほぼ同じ水準で、どちらも5割を割っています。投資経験が豊富なはずの中高年男性が一番負けているのです。一方で、高齢女性は儲かった人の割合が高くなっています。この層の特徴は、レバレッジをあまりかけていないことと(5倍未満が6割)、長期スタンスで取引を行っていることです(1か月以上が5割強)。この結果から見えることは、集中して短期売買を行うか一攫千金を狙わない中長期投資が功を奏し、中途半端な取引は成果が上がらないということでしょうか。
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