キャリートレード

キャリートレードとは

   キャリートレード(Carry Trade)は投資手法の一つですが、広義と狭義があります。広義では、資金の調達コストを上回る運用収益が安定的に得られるような取引全般をさします。代表的な運用対象は債券ですが、他にも株式や不動産など様々な金融商品で行われます。例えば、銀行でお金を借りてマンションを購入し、賃貸してコストを上回る収益を得る取引などもそうです。

   一方、狭義では通貨キャリートレード(Currency Carry Trade)を指します。これは、低金利の通貨で調達した資金を高金利通貨に換えて運用する手法をいいます。借り入れを行うため、レバレッジを効かした取引でもあります。FXではもちろん狭義の意味で用いられ、特に円を調達通貨とする円キャリートレードが有名です。以下は通貨キャリートレードを前提として解説します。

キャリートレードのポイント

   キャリートレードは基本的に金利差が大きいほど盛んになりますが、将来の金利差が広がるか縮小するかといった予測も重要です。また、ボラティリティーも重要なファクターです。為替相場の変動が少なければ、それだけ為替リスクも低下するので、キャリートレードが盛んになります。

   キャリートレードは、調達通貨(ファンディング通貨)にとっては下落要因、運用通貨にとっては上昇要因となります。しかし、借りたものはいつかは返さなくてはなりません。キャリートレードを解消する動きが広がると、調達通貨にとっては上昇要因、運用通貨にとっては下落要因となります。特に、解消の動きは一気に起こる傾向があるので、注意が必要です。

キャリートレードの盛衰

   キャリートレードを行うにはある程度の金利差が必要です。近年では2007年ころが円キャリートレードのピークでしたが、このときの政策金利は米国が5.25%、ユーロ圏が4.0%、オーストラリアが6.25%、ニュージーランドが8.25%ありました。一方で円は0.5%。そしてその夏頃からサブプライム問題が表面化し、リーマンショックへと続く中で各国が金利を下げたため、円との金利差は縮小。円キャリートレードも下火になりました。

   新興国の中には高金利の通貨もありましたが、キャリートレードでは流動性も必要であるため、マイナーな通貨では大規模には行われません。また、キャリートレードは安定的な収益を指向するので、ボラティリティーが高い状態は敬遠される傾向があります。2000年代前半から2007年夏頃まではこの意味でも理想的な環境にあったわけです。

キャリートレード

キャリートレードの実態

   円キャリートレードはヘッジファンドなどが銀行から円を借りて行うプライベートな取引ですから、もとより統計などありません。ただ、参考になる指標があります。外国銀行の日本支店が本店に送金する円の額です。2007年当時は毎月20兆円に達する円が海外に送金されていました。2013年時点ではその3分の1程度に減少しています。この数字からも、円キャリートレードが下火になっていることが伺えます。

円キャリートレード復活の可能性

   円キャリートレードが復活する可能性は一重に金利動向にかかっています。金利差の目安は4〜5%程度。国際収支などの円高要因も後退しており(参考記事:長期的な円の需給関係)、この程度の金利差があれば円キャリートレードが復活し、さらなる円安を招く循環が生まれる可能性があります。

個人のキャリートレード

   一般的に円キャリートレードは円売りを伴うため、円安要因になります。もともとは金利差を狙う取引であり、為替相場はリスク要因であるわけですが、大規模なキャリートレードが行われると、為替相場でも利益が得られる可能性が高くなります。2000年代前半から2007年当時はまさにそういう状態でした。このときは、個人投資家も大いに利益を上げて、脱税問題が新聞をにぎわしました(参考記事:FXの脱税事件)。FXで高金利通貨を買い持ちしてスワップポイントを稼ぐ手法(いわゆるスワップ狙い)はまさにキャリートレードそのものです。

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