FXの脱税事件

   今では目にしなくなりましたが、FXにからんだ大型の脱税事件が新聞紙上を賑わした時期がありました。平成18年の事務年度(18年7月-19年6月)では、224億円もの申告漏れがあったそうです。なぜ、FXによる脱税が多かったのでしょうか。おそらく、次のような背景があったと思われます。

  • 当時のFXは申告課税で、しかも店頭FXでは支払調書の提出義務もありません。つまり、申告しなければ『ばれない』わけです。ただし、税務署から調査に乗り出さなければの話しですが。
  • 17年から19年にかけては円安傾向が続きました。ニュージーランドドルなどの高金利通貨を買い持ちして保持し続ければ(バイ&ホールド)、為替差益とスワップポイントのダブルで利益をあげることができ、実際に大儲けした人が多かったんですね。
  • 税務署も、FXがまだ一般的でなかった頃はあまり注目していなかったと思われますが、急速に広がったため調査に乗り出したわけです。税金は5年までさかのぼって調べることができるので、何年分かの脱税が一気に表面化することとなったわけです。

   上記のようなことが背景にあって、大型の脱税事件が相次いで世間を騒がせることとなったのでしょう。では、具体的に報道されたケースを掲載しておきます。

平成19年4月12日 読売新聞

   個人投資家向けの金融商品「外国為替証拠金取引」(FX)で2005年までの3年間に得た約4億円を税務申告せず、所得税計約1億3000万円を免れたとして、東京都内の主婦が東京国税局から所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発されていたことが分かった。外為証拠金取引は少ない資金で多額の利益が期待でき、投資家の人気を集めている反面、税務申告しないケースが目立っているが、脱税が明るみに出たのは初めて。

   告発されたのは、東京都世田谷区の主婦○○○○氏(59)。
関係者によると、主婦は自分と夫の名義で口座を開設、複数の先物取引会社を通じて商品先物取引や外為証拠金取引を行い、主に外為証拠金取引による所得を隠していた。数年前、親から財産を相続し、数千万円の運用資金があったという。親は千葉県内の開業医だった。

   同国税局では、商品先物取引による所得はほとんど申告していたのに、外為証拠金取引の所得は全く申告していなかったことなどから、脱税の意図があったと認定。夫名義の口座で取引した点も、不正行為にあたると判断した。外為証拠金取引は、外貨を売買し、為替相場の変動や金利差による利益を狙う商品。元手となる証拠金の数倍から数百倍の外貨を売買できるため、大きな損失を被る危険がある一方、多額の利益を上げることも可能だ。円安傾向もあって人気を集め、売買高は年間300兆円を超えるという。主婦は取材を拒否したが、夫は「本人は反省しており、修正申告も済ませた」と話している。

平成19年7月24日 読売新聞

   個人投資家に人気の金融商品「外国為替証拠金取引」(FX)で得た利益を申告していなかったとして、東京都足立区の不動産賃貸業の男(70)とその妻(66)、江戸川区の保険代理業の男(84)の3人が、東京国税局から所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発されていたことがわかった。3人が隠した所得の総額は2005年までの3年間で約9億7000万円。多額の利益が期待できるFXが高齢者にまで浸透している一方、脱税の温床にもなっていることが明らかになった。

   関係者によると、不動産賃貸業の男と、美容院を経営する妻は、2人合わせてFXで得た所得約7億5000万円を隠し、2億数千万円の所得税を脱税。保険代理業の男も同様に所得約2億2000万円を隠し、約7000万円の所得税を免れた。

   3人はいずれも本業による所得は申告していたのに、FXに伴う所得は全く申告しておらず、同国税局から脱税の意図があったと判断された。3人は隠した所得の多くを取引の元手となる証拠金に組み入れ、さらに多額の取引を繰り返していたという。

   証券会社によると、現在のFXはインターネットによるものがほとんどで、投資家は30〜40歳代が中心。だが、1998年に取引が解禁された当初は金融商品の知識に乏しい高齢者層を狙って営業する業者が多く、損失を出す高齢者もいる一方、たまたま短期間で利益を上げ、FXにのめり込んだ人もいるという。

   株取引と異なり、FXを扱う仲介業者には顧客の取引を記した書類を税務署に提出する義務がないことから、投資家の申告漏れを招きやすいとの指摘がある。このため、FXの脱税で初めて都内の主婦が告発されたことが発覚した今年4月、仲介業者が会員となっている社団法人「金融先物取引業協会」(千代田区)は、取引を扱う百十数社に対し、FXによる利益は「雑所得」として課税対象となり、申告が必要だということを顧客に周知するよう文書で通知。国税庁では、仲介業者に取引書類の税務署への提出を義務づけることを税制改正で要望する方向で検討している。

平成19年7月25日 産経新聞

   兵庫県西宮市の元職員の女性(33)と両親の3人が平成15〜17年の3年間で、外国為替証拠金取引(FX)で得た所得計7億2600万円を隠し、約2億5000万円を脱税していたとして、大阪国税局が大阪地検に所得税法違反罪で告発していたことが24日、わかった3人はいずれも容疑を認め、修正申告を済ませたもようだ。

   重加算税を含めた追徴税額は3億3000万円に上るとみられる。関係者によると、元職員ら3人は14年末ごろから、東京に本店がある商品先物取引会社を通じてFXを開始。父親(63)は15年に約5700万円の利益をあげたが、税務署には雑所得などを合わせた所得は約90万円と申告していた。

   16年には父親が6000万円、二女の元職員は4400万円以上の利益を得ていたが、ほとんど申告していなかったという。さらに17年に入ってから、3人は複数の業者にもFXの口座を開設し、取引を拡大。父親が1億6000万円以上、母親(63)が2億2400万円、元職員が1億7700万円をもうけたが、それぞれ所得額を280万〜560万円とする虚偽申告を行い、脱税。父親は西宮市内で酒店を経営していたが、FXを始めてまもなく廃業。二女の元職員は西宮市に勤務していたが、大阪国税局の告発を受けた直後の5月末に「個人的な理由」で退職している。優秀な職員で4月に新しい部署に変わったばかりだったという。

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