CDS

   CDSは Credit Default Swap の頭文字をとったもので、そのままクレジット・デフォルト・スワップとも呼ばれます。クレジット・デフォルトというのは債務不履行(デフォルト)のこと。スワップはそのリスクを移転するという意味ですから、CDSは一種の倒産保険のようなものです。具体的には保有している債権が不履行になることを恐れる債権者と、それを保証してくれる引き受け会社(保険会社など)の間で、プロテクションと呼ばれる権利を売買します。

CDSのしくみと利用

   仕組みは単純です。例えばあなたが友達のA君にお金を貸していたとします。A君は借用証書も書いてくれたし、利息も支払うと約束しています。しかし、噂ではA君は個人破産してしまう可能性があるようです。そこであなたはCDSの引受会社に保険料を支払って、この債権を保証してもらうことにしました。保険料を払うのはもったいないですが、全額返ってこないよりはましです。そして案の定、A君は破産し、あなたが貸したお金は返ってこないことになりました。でも大丈夫。CDSの引受会社は、あらかじめ決めておいたルールにしたがって、あなたに保険金を支払ってくれますから(これをペイアウトと言います)。

   実際のビジネスの場では、例えば銀行が保有している貸付債権をCDSでヘッジしたり、債券の発行会社が投資家に安心して買ってもらえるようにCDSを利用します。一方、CDSは保険ですが生命保険や損害保険ではないので、別に保険会社でなくても引き受けることが可能。実際には、銀行、証券会社、保険会社などが、高収益をもたらすCDSの魅力に引かれ引き受け業務を行っていました。

CDSの起源

   CDSはアジア通貨危機の教訓などから、投融資のリスクを管理するために考案された金融派生商品です。1987年にAIGがロンドンに設立した会社が起源で、98年から取引が始まりました。当初は慎重に管理されていたようですが、2001年頃から徐々にアクセルが踏まれ、サブプライムローンの拡大とともに暴走を始めます。取引規模はピーク時の2007年末で58兆ドル(想定元本ベース)。なんと米国GDPの4倍超に達する数字でした。2012年末では半分以下まで減少したとは言え、依然として大きな需要があるのです。金融機関が自己資本比率を上げる目的などで利用したり、米国の民間企業が発行した債券の半分くらいはCDSが利用されていると言われます。

CDSとリーマンショック

   CDSは債務不履行を担保する保険ですから、その引き受け会社自体が破綻したら、連鎖的に債務不履行や倒産が起こる可能性があります。リーマンショックが起こったとき、米国政府がリーマンブラザーズを見捨てる一方でAIGを救ったのは、AIGが膨大なCDSを引き受けていたからだとの見方もあります。詳しい経緯などは『AIGの救済』にまとめてありますのでご参照ください。

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