アルゴリズム取引
アルゴリズムとは
アルゴリズム(Algorithm)とは、ある目的を達成するために定型化された手順のことです。例えば、辞書で「Apple」の意味を調べる作業をコンピュータにやらせる場合を考えます。一つには辞書データの先頭から順番に一致する言葉を探すという方法があります。これはこれで一つのアルゴリズムです。しかし、次に「Zoo」を引こうと思った時にこの方法では効率が悪くなります。そこで、辞書の最後から引くという別のアルゴリズムが考えられます。
しかしこれらの方法は応用性を欠きます。そこでどんな単語でも同じようなスピードで引ける方法を考えてみましょう。まず辞書の中央を引き、目的の単語がそれよりも前にあるか後にあるかを判断します。そしてまた、該当する半分部分の中央を引く。この作業を何回かやってある程度絞り込んだら、最後はその範囲の先頭から探していく。これだと単語によって方法を変える必用はなく、スピードもあまり変わりません。実はこれ、「検索アルゴリズム」という有名なアルゴリズムの一例なのです。人間ならこんな面倒なことはしませんが、コンピュータプログラミングの世界では、少しでも曖昧な部分があると答えは出てきません。人間の行う作業とは異なる発想が求められるわけです。
アルゴリズム取引とは
さて、前置きが長くなりましたが、アルゴリズム取引はこうした一定のアルゴリズムに基づいて行う取引のことです。売買の判断はコンピュータが行い、注文も自動的に執行されます。同じような言葉に「システムトレード」(シストレ)がありますが、両者は進化の度合いが違うと言ってよいでしょう。システムトレードは、テクニカル分析を利用して、一定の条件が満たされた場合に取引を行います。アルゴリズム取引は、そうしたテクニカル分析による売買サインだけでなく、もっと多くの変数をプログラムに与えて、様々な売買戦略を実現しています。例えばアルゴリズム取引には以下のようなタイプがあります。
- 裁定取引
割安な銘柄を買う一方で同時に割高な銘柄を売る取引ですが、割高・割安を一定のアルゴリズムによって瞬時に判断します。 - イベントドリブン
市場が注目する政治経済の指標や政策が発表されると、相場はそれに反応してボラティリティーが高くなります。これを捉えて利ザヤを稼ぎます。 - ティッカーテープ
売り買いの注文状況を示す「板」の情報を利用して超短期の動きを予想します。 - マーケットメイク
売値と買値を同時に提示して市場に流動性を提供し、スプレッドや手数料を稼ぎます。
アルゴリズム取引の隆盛
アルゴリズム取引は、コンピュータ技術が発展をとげてきたことと歩調を合わせ、市場におけるシェアを拡大してきました。ヘッジファンドが扱うアルゴリズム取引の運用資産を見ると、2000年ころは15兆円ほどでしたが、2016年には90兆円を超えるまでに成長しています。また、東京証券取引所の注文件数に占める割合は、今や80%に迫ろうという勢いです。6年ほど前には10%ほどでしたから、市場の構造は短期間で大きく様変わりしました。この背景にあるのは、東証が2010年に稼働させた売買注文の高速処理システム「アロ−ヘッド」です。それ以前は一つの注文処理に2秒かかっていたものが、1000分の2秒に短縮されたのですから、コンピュータ取引による出来高が急増したのは当然の成り行きと言えます。
個人投資家によるアルゴリズム取引
FX業者によっては、個人が作成したプログラムで取引ができるサービスを提供している会社があります。メタトレーダーという取引プラットフォームを提供している業者等がそうです。ヘッジファンドが行っているような高度な取引は難しいですが、独自のノウハウに基づいたシステム取引を行うことが可能です。ただし、ある程度はプログラミングの知識が必用になります。
そのような知識がない場合は、ソ−シャルトレードと呼ばれるサービスを利用する方法もあります。これは、FX業者が作成したシステム取引をフォローする取引手法です。売買手法や過去の成績から気に入ったものを選ぶと、後は自動的に売買してくれます。もちろん、選んだシステム取引が利益を生むかどうかは為替相場の状況次第ですから、現在の相場を分析して相性のよいシステムを選択することが結果を左右します。