FX法人化のメリット・デメリット
FXを会社名義で行うことを検討する場合、まずはそのメリットとデメリットを押さえておくことが肝心です。後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、以下にあげるメリットとデメリットを天秤にかけて検討しましょう。なお、前提としては、ごく小規模な会社(役職員は本人一人とかせいぜい家族を事務員として雇用する程度)で、副業として行うことをイメージしています。
法人化のメリット
1.レバレッジ規制の回避
FXで法人化を検討する理由の多くはレバレッジ規制の回避だと思います。個人口座でFXを取引する場合は、法令により最大でも25倍までしかレバレッジをかけることができません。しかし法人口座ではこの規制がかからないので、より高いレバレッジを使うことが可能です。業者によってその上限は異なりますが、メジャーな通貨ペアであれば100倍程度に設定している業者が多いようです。
2.節税
FXに限らず事業を法人化する場合のメリットとしてよく節税があげられますが、ある程度の規模がないとメリットは生まれません。FXでも同様です。税金関係については下に独立して取り上げていますので、そちらをご参照下さい。
法人化のデメリット
1.事務負担
小さな会社と言えども、経理・税務関係を中心に事務負担が発生します。税理士に委託すれば楽ですが、それなりに費用がかかりますから、収入がかなりないと割にあいません。事務負担の主なものは、日々の帳簿付けと年に1回(中間申告をする場合は2回)の確定申告です。帳簿付けは会計ソフトを買ってくるのが手っとり早いですが、それでも簿記の知識はある程度必要です。まったくないようなら、ひととおり勉強しないと簡単な仕訳もままなりません。ネットで検索すれば参考事例は見つかりますが、最低限の仕組みや会計用語は知っておく必要があります。
ただ、日々の帳簿と言っても実際には月一回まとめて行えば十分です。休みが半日か一日つぶれるのは覚悟しなければなりませんが。また、確定申告ともなれば、全て完了するまで2〜3日は当てなければなりません。申告書類は素人でも書けますが、慣れないと分かりにくいので、初年度はけっこう苦労します。
2.会社の清算
法人化を検討するに当って、清算のことはあまり念頭にないと思います。しかしこれがかなり面倒なのです。会社をたたむ手続きは2段階になっていて、まずは解散とその確定申告および登記を行います。そして一定の作業が完了したら、今度は清算とその確定申告および登記。それで晴れて会社は消滅するのですが、手間も費用もかかることは知っておきましょう。
レバレッジ規制を回避する目的で法人化を検討するなら、何らかの事情でFXが続けられなくなるリスクは十分に勘定に入れておかねばなりません。会社は活動していなくても、後述するように最低7万円の税金はかかってきます。そうした点も初めから考慮に入れておきましょう。
税金について
税金についてはメリットとデメリットの両方の側面があるので、切り離して書くことにしました。まず法人税制の概要ですが、大きくわけて国税と地方税があります。国税のほうは所得税ですので、もし赤字決算なら税金はかかりません。しかし、地方税の住民税には均等割というものがあって、赤字会社でも最低限支払わなくてはいけない額というものがあります。為替相場で損をして、おまけに税金まで払わなくてはならないなんて、泣きっ面に蜂。このあたりの実情はよく理解しておく必要があります。
1.国税と地方税
確定申告が近付いてくると、申告書類が送られてきますが、送り主は一か所だけではありません。仮に東京都の市部に会社があるとすると(厳密に言うと登記した会社の住所。これが納税地となります)、国と都と市から送られてきて、それぞれに申告をする必要があります。納税の時には、三ケ所の事務所におもむく必要があるわけです。で、冒頭にも書きましたが、国税は会社の利益に課税されるだけなので、収入から経費を差し引いた年度の所得がゼロ以下なら無税です。プラスなら課税され、税率は22%〜30%です。
個人の場合は一律に20%(※)ですから、それと比べると高いですね。単純に税率だけ考えると、法人化はデメリットであるわけです。さらに地方税もかかってくるので全体で40%を超えます。また、地方税には均等割という怖い仕組みがあります。これは赤字でも黒字でもかかってくるもので、最低7万円(都は2万円で市が5万円)。会社を維持する限りは確実に必要となるコストです。
※平成23年まで店頭FXは総合課税でしたの累進税率になっていましたが、平成24年からは申告分離課税に変わりました。
2.経費
上で書いたように、税率だけ考えると断然個人のほうが得です。ただ、法人化すると会社を運営するために必要となる経費が認められ、収入から差し引くことができます。課税対象は収入から経費を差し引いた残りの部分(=所得)ですので、節税のためには経費をうまく計上する必要があります。代表的な経費には以下のものがあります。
- 人件費
役員報酬や社員の給与は最大の経費項目です。例えば奥さんを社員やパートとして雇い給与を支払えば節税になります。もちろん、給与にも税金(所得税)はかかりますが、法人税を下回るような水準の給与にすればよいわけです。まぁ、そんなに高い給与を支払うことはまずあり得ないでしょうけれど。あと、給与には所得控除もありますしね。それより注意が必要なのは、役員報酬です。というのも、役員報酬は原則として年度の初めに決めておかなければ経費として認めてもらえないんです。予想外に儲かったから役員報酬を増額しようとしても、そうは問屋が卸しません。ですので、収入のレベルに合わせて役員報酬を増減させるよう、あらかじめ決めておくのも一つの方法です。 - パソコン関係
オンライン取引にはパソコンやインターネットに接続する通信環境が必要になりますが、こうしたものも経費にすることができます。ただ、家庭用と供用する場合は全額というわけにはいかず、合理的な割合を算出する必要があります。 - 備品や消耗品
事務用品なども経費になります。ただ、額自体は大したことはないでしょう。 - 損失の繰越
法人の場合、赤字額は一定の期間なら翌期以降に発生した黒字から差し引くことができます。ある年度は相場で損をしたけれども次年度では利益がでたという場合、相殺することで課税を減らすことが可能なわけです。
総合判断
レバレッジ規制を回避する目的で法人化を検討する場合、まずそのメリットに目がいきますが、経理や税務に慣れていないと少なからず苦労します。逆に言えば、苦労はしますが、経理・税務・法務関係の知識は身につきますから、メリットと言えるかもしれません。ただ、会社を経営するわけなので、相応の時間と手間が必要になることはよく認識しておいたほうがよいでしょう。
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