購買力平価説

   為替相場を決める要因として、前のページではファンダメンタルズを取り上げました。その中でインフレや通貨の購買力にも触れましたが、経済学の理論にはそれらをテーマとしたものがあります。購買力平価説(Purchasing Power Parity Theory)です。日々の価格変動を説明するには適しませんが、長期の為替相場を考えるうえでは有効な理論と言えます。

購買力平価説の基本的な考え方

購買力平価説   購買力平価説の基本となっているのは、「A国とB国の間で物やお金の流れが完全に自由なら、同じ商品は同じ価格となるように為替レートは調整されるはずだ」という考え方です。例えば、マクドナルドは世界各国に出店し、均質な商品を供給しています。この考え方に従えば、ビッグマックの値段が米国で4ドル、日本で320円とすれば、為替レートは1ドル=80円が適性レートということになります。実際にイギリスの有名な経済誌『エコノミスト(The Economist)』は、ビッグマック指数(Big Mac Index)というものを掲載しています。ちなみに2012年のビッグマック指数を比較すると、日本は4.16ドル、ユーロ圏は4.43ドル、本家の米国は4.20ドルでした。購買力平価説に基づけば、この年の円はドルに対してやや高く、ユーロは安かったと言えます。

購買力平価説に基づく為替相場

   ビッグマックという身近な商品の価格をベースに為替レートを比較することは分かりやすいのですが、購買力は物価全体から総合的に判断されねばなりません。このため、購買力をベースに為替レートを分析するときは、CPI(消費者物価指数)PPI(生産者物価指数)など、いくつかの物価指数を使うことが一般的です。

   下の表は財団法人国際通貨研究所が公表している購買力平価の一部(2013年2月時点)ですが、同研究所では消費者物価、企業物価、輸出物価の三つを基準としています。

通貨ペア 実際の為替相場(月中平均) 消費者物価ベース 企業物価ベース 輸出物価ベース
ドル円 93.07 126.45 96.35 68.09
ユーロ円 124.40 94.31 92.62 89.73

   また同研究所が公表している購買力平価のチャートもご紹介しておきます。最新のものは他の主要通貨も含めてこちらでご覧いただけます。

購買力平価

内閣府が公表した購買力平価

   もう一つ例を挙げておきます。下図は内閣府のサイトに掲載されていた、購買力平価説に基づく為替相場のチャートです。縦軸にドル/円のレート、横軸に西暦をとっています。データが古く画像も粗いので恐縮ですが、ご参考までに転載しました。このチャートでは、購買力を算出するために消費者物価、国内卸売物価(≒生産者物価)、製造業GDPデフレータ、輸出物価の各種物価指数を比較使用しています。これらをベースにして理論的な為替レートを求めているのです。大雑把に言うと、長期的なドル/円のレートは、消費者物価ベースと輸出物価ベースで計算されたレートの間で推移していることが分かります。

購買力平価

購買力平価とインフレ

   購買力平価説の考え方に基づくと、インフレ率も為替相場に影響を及ぼす重要な要因となります。例えば先ほどの例で、ビッグマックの価格が、米国ではインフレのために5ドルに上昇する一方、日本では変わらないとします。すると、5ドル=320円から導かれる為替レートは64円です。インフレは通貨価値の下落ですから、日本よりもインフレ率の高い米国のドルは、対円で下落することになるわけです。実際の相場では、インフレ率の高い国は金利も高いので、資金が集まって上昇する場合もあります。しかし、金利からインフレ率を差し引いた実質金利が高いか安いかが問題です。名目金利が高くても、実質金利が低ければ、その通貨は長期的には下落する可能性が高いと言えます。

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