経常収支

   経常収支は、国と国が行う経済的な取引の中で、主にモノとサービスのやりとりを集計したもの。投資などお金その収支(資本収支)は除かれています。具体的には以下の四つの収支から構成されています。

  • 貿易収支…工業品や農産物などのモノの輸出額から輸入額を差し引いた金額。
  • サービス収支…かたちのないサービスに対してお金を払う場合の収支です。例えば、海外旅行に行くとき外国の航空会社を使うとか、国際電話をかけるとき外国の通信会社にその料金を払えば、サービス収支は赤字になります。逆に海外の居住者が日本の会社のサービスを使えば黒字になります。
  • 所得収支…海外支店が稼いだ所得や出稼ぎ労働者の所得、金利所得などです。海外から日本に来て働いた人がその所得を母国に送金すれば赤字、逆のことが起これば黒字になります。
  • 経常移転収支…政府が行う海外援助などの収支です。

   経常収支と資本収支を合計したものが国際収支となり、それが黒字なら外貨準備が増加し、赤字なら外貨準備は減少します。経常収支が黒字だと、稼いだ外貨を母国通貨に換える需要があるため、その国の通貨には上昇圧力がかかりやすくなります。経常赤字の場合はその逆。高度成長期の円が円高傾向を辿ったのはこのことが一因です。ただ、為替相場は様々な要因で変動しますので、一概に言うことはできませんが。主要国の中では米国やニュージーランドなどが大幅な赤字国です。

経常収支の不均衡

   経常収支の不均衡は常に世界経済の大きな問題です。大きな構図としては、内需旺盛な米国の赤字と輸出立国の黒字という関係があります。しかし2008年に起こったリーマンショックの後、米国の経済停滞によって不均衡は縮小しました。IMF(国際通貨基金)によると、新興国の黒字は2008年の6760億ドルから13年には3000億ドルに55%減少する一方、先進国の赤字は4790億ドルから500億ドルへほぼ10分の1に減少しています。しかし不均衡はまだ残っています。2013年時点の状況を整理すると以下のような感じです。

  • 赤字国
    ○米国…2006年の8000億円から2013年には4730億ドルへ赤字が減少
    ○赤字新興国(上位9カ国:インド、ブラジル、トルコ、インドネシア、南アフリカ、ポーランド、ウクライナ、コロンビア、メキシコ)…3280億ドルへ赤字が拡大
  • 黒字国
    ○日本…黒字が年々減少
    ○ユーロ圏…過去最高の黒字
    ○中国…黒字が2380億ドルに大幅減少
    ○ロシア…黒字は560億ドルで横這い

   一昔前に問題だった米国と東アジア諸国との不均衡は緩和されてきています。しかし、ユーロ圏(特にドイツ)と上記新興国の不均衡は拡大しています。こうした不均衡は資本収支によって補われていますが、何らかの要因で新興国への投資が変調をきたすと、金融危機が再発する可能性は少なくありません。為替市場が経常収支の不均衡に注目し始めたら要注意と言えるでしょう。

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