FXのカバードコール戦略

カバードコールとは

   カバードコール(Covered Call)は、オプションの原資産(例えば株や為替)とオプションを組み合わせた取引です。カバードコールという名称は、原資産の裏付によってリスクがカバーされているコール、というような意味です。

   具体的には、原資産を買い持ちしている状況で、コールオプションを売ります。例えば、FXでドル円の買い建玉を保有しているときに、追加でドル円のコールを売り建てるわけです。ではそうした取引を行うメリットや目的はなんでしょうか。簡単に言うと、もともと持っている原資産の下落リスクを軽減しながら、確実にプレミアム収入(オプションの売却代金)を稼ぐことにあります。ただし、相場が大きく上昇した場合の利益は放棄することになります。ですから、当面は相場が停滞すると見込んでいるときに有効な戦略と言えます。

カバードコールの事例

   では事例を検証しながら詳しく見ていきましょう。あなたは今、FXでドル円の買い建玉を保有していたとします。中長期的には円安基調を見込んでおり、スワップポイントを稼ぎながら、将来の値上がり益を狙う方針です。しかし短期的には調整局面を迎えそうな状況だとしましょう。ただし大幅な下落は想定しておらず、小幅な下落か横這いを予想しています。この環境では以下のような選択肢が考えられます。

  1. 中長期的には上昇基調と判断しているので何もしない。多少の下げは想定内という姿勢。
  2. いったん利食い、押し目を待って再度買い建玉を作る。
  3. カバードコール戦略を実行する。すなわち、現行水準より少し高めのストライクプライスでコールオプションを売る。

  • もしあなたが大幅な下落の可能性を見込んでいるなら決済を選択するでしょうし、このまま上昇が続くと予想するなら何もする必要はありません。あくまでボックス圏の動きをイメージしている場合です。

   一般的には1か2で迷うと思います。理想を言えば2ですが、仮に相場が期待通りに展開しても押し目を買うタイミングは難しいもの。それに値動きを監視している必要もあります。仕事があるから放っておく(つまり1)という方が多いでしょう。では3のカバードコール戦略を採った場合はどうなるでしょうか。結論から言うと、相場を監視していなくても2のような効果が得られるのです。

A.予想通りに目先は調整局面となった場合

   売り持ちしているコールは権利行使されないため、プレミアムがそのまま収益として残ります。つまり、何もしなかった場合よりも収益が上積みされ、上手く押し目で買った場合と同様の効果があります。

B.予想に反して上昇トレンドが続く場合

   ストライクプライスを超えて相場が上昇するとオプションが権利行使され、あなたはFXの売り建玉を持つことになります。しかしもともと買い建玉を持っているので相殺され、FXの建玉はなくなります。いったん利食ってしまった場合と同様に、何もしなかった場合に得られたはずの利益は逃してしまいます。ただし、プレミアム収入の分だけカバードコールのほうが得することになります。このケースでは、何もしなかった場合が一番良い結果になりますが、予想が外れたわけですから仕方ありません。

C.想定外の大幅下落が起こった場合

   相場が大きく下落した場合はどうでしょうか。このケースでは、2は押し目の値幅分だけ、3はプレミアム収入の分だけ、何もしなかった場合よりも損失を軽減できます。

カバードコールの有効性

   カバードコール戦略は、もともと原資産を持っている状況で相場が停滞しそうなときに有効な戦略です。もし原資産を保有していないのであれば、バニラオプションだけで相場停滞時に利益をあげる戦略を組むことができます(ショートストラドルやショートストラングル)。

   日本ではFXのバニラオプションを扱っている業者は限定されますが、口座を作っておくと、様々な相場状況に対応できるようになります。単に売ったり買ったりするだけの取引手法よりも、確実にチャンスは増えるでしょう。検討してみる価値はありますよ。

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