FXの長期投資
FXは短期売買で利益を狙う投機イメージが強いと思いますが、長期投資でも大きなメリットがあります。外貨預金よりもコストが安いですし、レバレッジを効かせることもできます。もちろん、効かせないという選択もできます。株式や投資信託と違って、リスク・リターンの度合いを自分でコントロールできるわけです。
また、後述するように為替相場には数年から5年程度続く長期トレンドが発生することがあります。この流れに乗って若干のレバレッジを掛ければ、大きく資産を増やすことができます。以下、FXによる長期投資で成功するためのノウハウを解説していきます。
FXで長期投資を行う場合の視点
為替相場は二つの通貨の相対的な価値です(参考記事:為替相場の特徴)。ゆえにファンダメンタルズを比較して、一方の通貨が強くもう一方の通貨が弱ければ、明確なトレンドの発生が期待できます。どちらも強かったりどちらも弱かったりすると、綱引き状態となってトレンドは生まれにくくなります。これを整理すると次のようになります。○は強いトレンドが、△は穏やかなトレンドが期待でき、×はトレンドがあまり期待できないケースです。
A通貨 | 強い | 強い | 強い | 中立 | 中立 | 中立 | 弱い | 弱い | 弱い |
B通貨 | 強い | 中立 | 弱い | 強い | 中立 | 弱い | 強い | 中立 | 弱い |
トレンド | × | △ | ○ | △ | × | △ | ○ | △ | × |
FXで長期投資を行う場合は、こういう視点をもって銘柄を選択することが重要になります。一方が強く、一方が弱いというケースは、経済記事を丹念に読んでいれば発見することができます。しかし通貨が強いとか弱いというのは、そもそもどういう状況なのでしょうか。次にそういった事例を具体的に見ていきましょう。
為替相場で発生した長期トレンドの事例
例えばユーロ/豪ドル。もともと豪ドルはユーロの動向に追随する傾向があるため、この通貨ペアでは息の長いトレンドが生まれることはあまりありません。下のチャートはユーロ/豪ドルの月足ですが、2008年ころまではそんな感じです。ところが2009年から2012年の中ごろまでは、約3年半におよぶ長期の下降トレンドとなっています。なぜでしょうか。
このとき、ユーロにはユーロ危機という弱材料がありました。一方、豪ドルには中国景気という強材料がありました。中国はリーマンショック後に大型の景気刺激策を打ったため、同国を主要な輸出先とするオーストラリアのファンダメンタルズは良かったのです。ユーロ圏のような信用不安もありません。まさに、一方の通貨は弱く、一方の通貨は強かったわけです。
ところが、2012年半ば以降はユーロが上昇に転じます。これはユーロ危機が沈静化して欧州の景気が持ち直す一方、中国の景気が鈍化したからです。2013年7月に発表されたユーロ圏と中国のPMI(購買担当者景気指数)を比較すると明白です。ユーロ圏は1年半ぶりの高い数字(マークイット社発表)、中国は約1年ぶりの低水準(HSBC社発表)だったのです。
長期投資でチェックすべきファンダメンタルズ
では、FXで長期投資を行う場合にチェックすべきファンダメンタルズを簡単に整理しておきます。
- 景気動向…もっとも重要な要因です。世界景気はゴローバル化の波によって同調性を強めつつありますが、国ごとに個別の事情や景気サイクルが存在します。景気が良ければその国の通貨は買われ、悪ければ売られる傾向があります。
- 政治的要因…政治的に安定していれば投資が活発になり通貨の需要が増します。逆に不安要因があると、国境を越えてお金が逃げ出してしまいます。
- 商品市況…鉄鋼や銅などの金属原料、原油や天然ガスなどのエネルギーといった産業資材には中長期的なサイクルがあり、資源国通貨の動向に影響を及ぼします。
- 財政事情…国の財政が危険な状況になり最悪デフォルトが懸念される状況にいたると、当然ですが通貨は売られます。
FXによる長期投資の勘所
FXは24時間取引ができて流動性も豊富であることから、短期売買にはうってつけの金融商品です。しかし、上述のように2国の政治経済をみきわめることができれば、中長期投資にも応えてくれる金融商品です。世界情勢に関心がある方なら、企業の成長に投資する株式とはまたちがった醍醐味を味わうことができるでしょう。
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