FXでは取引手数料がかかりませんし、売値と買値のスプレッドも驚くほど狭いですね。FX業者はどうやって利益を出しているのでしょうか?

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   FXでは取引手数料ゼロが当たり前になっています。しかし、取引業者も民間企業ですから、なんらかのかたちで収益を得られないと、会社を維持していけません。手数料をゼロにしているなら、それ以外の方法で収益を確保しているわけです。そのしくみをご説明しましょう。

   FXは大きく分けて店頭FXと取引所FXに分類されます。店頭FXは、相対取引といって、顧客と業者が互いに取引の相手方となる方式です。極論すれば、お互いの合意があればどんな取引も可能なので(もちろん法令の範囲内ですが)、商品設計の自由度が高いという特徴があります。これに対し取引所FX(くりっく365)では、顧客の取引相手はTFX(東京金融取引所)となり、TFXのルールに規制されます。そのため、手数料をゼロとするのは現実的に厳しいという事情があります。したがって、手数料ゼロを標榜している業者は、店頭FXを扱っていると考えてよいでしょう。

自動カバー方式の収益

   さて、手数料以外に収益を得る方法としては、売値と買値の差であるスプレッドを利用する方法が代表的です。店頭FXの場合、取引業者はインターバンク市場に参加している銀行などからレートをもらい、これを顧客に提示しますが、その際に自社の儲けを乗せて顧客に提示するわけです。

   具体的な例で考えてみましょう。A社はB銀行からレートをもらっているとします。B銀行がA社に対して提示するレートは、例えばドル/円でスプレッド1銭だとします。ある時のレートは100.00円−100.01円でした。一方、A社はこれを受けて顧客に対し99.99円−100.02円を提示します。つまりスプレッドは3銭に広がっています。顧客が成行で買い注文を出すと100.02で約定すると同時に、A社とB銀行では100.01円の取引が成立します。A社は顧客に対して100.02円でドル/円を売る一方、B銀行から100.01円で買っているわけです。ここで、1銭がA社の確定収益となります。

   この例では、顧客と行った取引を自動的にカバーしていますので、相場リスクはありません。ただ、収益率も低いので、取引のボリュームを稼がないと事業としては厳しい面があります。そこで、相場リスクをある程度取ることで、期待収益を高めようとする業者もいます。つまり、ディーラーの裁量でカバー取引を行うケースです。

裁量カバー方式の収益

   上の例で、業者が99.99-100.02でレートを提示しているとき、二人の顧客から同量の買い注文と売り注文が入ったらどうなるでしょう。業者は一人の顧客には売り、もう一人の顧客からは買うので、相場のリスクがありません。カバー取引を行う必要がないのです。結果として、スプレッド分の3銭がまるまる収益となります。カバー取引でバランスをとる場合に比べて、はるかに高収益です。

   しかし、そうそう都合よく顧客同士の取引だけで売りと買いのバランスが拮抗することはありません。普通は、高金利通貨のほうが圧倒的に買いなが(買いポジションのほうが多いこと)になります。そして、そのアンバランスは絶えず変化します。この状況を見ながら、ディーラーが臨機応変にカバー取引を行うわけです。メリットは、顧客の注文同士で相殺(ネッティング)できた部分については、カバー取引のコストがかからず、スプレッド分がまるまる収益になることです。デメリットは、へたなカバー取引を行うと、相場で損を出す危険があることです。

指値注文による収益

   このように、ディーラーが裁量でカバー取引を行う方法では、ネッティングできた分だけ収益が高まることになりますが、実はもっとおいしい部分があるのです。それは指値注文に対するカバー取引です。例えば、ドル/円で100円に顧客の指値注文が固まって入っていたとします。相場が下がってきて100円が提示されました。顧客の注文が一斉に約定します。しかし、下がってきた相場が100円ちょうどで止まるよりも、さらに下がる可能性のほうが高いので、ディーラーはカバーを取らずに待ちます。案の定、99.99円がつきました。ここでカバーをとれば、1銭の確定利益を得ることができます。99.98円まで我慢すれば、利益は2銭に広がります。どこまで見るかは、ディーラ−の判断であったり会社のルールであったりしますが、指値に対するカバー取引は大抵の場合、利益をもたらしてくれます。

※こうした指値の扱いについては金融先物取引業協会の自主規制で制限しようとする動きがあります(2013年5月)。

その他の収益

   以上のように、手数料がゼロであっても、カバー取引のやり方によって収益を上げることが可能です。他にも、銀行が出すスワップポイントに自社利益を乗せて顧客に提示することで、収益を上げることができます。また、取引高がある一定以上になるという条件がつきますが、カバー取引先の銀行からキックバックを得るという方法もあります。さらには、顧客から預託された取引証拠金を信託口座で運用することによって、その運用収益も生まれます。

   以上のように、店頭FXでは手数料以外の方法で収益を得ることが可能です。ただ、手数料をゼロとする代わりにレートのスプレッドやスワップポイントに収益を含ませているケースもあるので、業者の取引コストを比較する場合には、トータルで考えることが必要です。

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