HFT

HFTとは

   HFTは High Frequency Trade の略で、高頻度取引のことです。コンピューターが1秒間に何百回・何千回も自動売買を繰り返すような手法をさします。HFTは為替市場でも浸透しており、日銀が公表したレポート(H25)では「HFTがスポット取引中の24%〜30%を占めるに至っている」という推計を紹介しています。

   HFTはプログラムに従って自動的に発注しますが、テクニカル分析にもとづく場合だけでなく、イベント前にプログラムを仕込んでおくこともあります。例えば、米雇用統計の発表時にNFPの前月比がプラスだったら円売り・ドル買いを行うように設定しておきます。プラスの数字が発表された途端、瞬時に大量の注文を執行していくといった具合です。

   ただし、プログラムに複雑な判断はできません。米雇用統計には失業率や時間当たりの賃金といった指標が含まれており、これらも含めて総合的に判断する必要があります。このため、HFTは最初の印象による市場の反応に勝負をかけているとも言えます。米雇用統計では当初上昇した相場が5分後には急落するといったことも起こりますが、HFTが値動きを増幅させている面はいなめません。ただし、HFTはごく短時間で売買を繰り返すため、為替相場に対しては中立であり、一方向に動かす力はありません。

HFTの問題点

   とは言え、HFTには以下のようにいくつかの問題点や課題が指摘されています。

1.公正性の阻害

   公正な取引環境を阻害している可能性があることもその一つです。一般投資家が人間の速度で行う取引と、ミリ秒単位の超高速取引が同じ土俵で行われているわけですから、不公平ではないかということです。大多数の一般投資家を置き去りにして、証券会社の自己勘定や機関投資家といった一部の市場参加者だけが美味しい思いをしている。そういう見方があるのは事実です。実際、2014年3月にHFTの大手ヴィルトゥ社が米証券取引委員会(SEC)に提出した資料では、2009年から2013年までの1,238営業日のうち、損失を出したのはわずか1日だけだったそうです。

2.誤操作による混乱

   また、特にニュースや材料があったわけでもないのに、相場が瞬間的に大きく乱高下して元に戻るという事象を目にすることがありますが、これなどはHFTの誤操作(ファット・フィンガー)や設定ミスが原因という見方があります。

3.有益性への疑問

  さらに、HFTは市場の存在価値を何ら高めていないという指摘があります。本来、自由経済における金融市場は、諸要因を反映した価格が自然に形成される場所であるという側面を持っています。これには「人間は合理的に行動する」という前提があるので、そこにも問題はあります(参考記事:FXと行動経済学)。ただ、ここではちょっと脇に置いておきましょう。「不特定多数の市場参加者が取引に参加することで自然な価格が形成され、それこそ市場の存在価値である」ということで話しを進めます。HFTはコンピューターがプログラムに従って技術的な判断で売買します。ファンダメンタルズに対する評価や将来に対する予想が入る余地はありません。そこから冒頭にあげた疑念が生まれるのです。

  こうした問題を含んだHFTの取引量がさらに増えた場合、金融市場の健全性は浸食されないのか。規制すべき点があれば当局はちゃんと規制するのか。一般投資家にとってけっして他人事ではありません。今後の推移が注目されるところです。

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