雇用統計

   雇用統計とは就業者数や失業率に関する統計のことですが、FXで雇用統計と言えば米国の雇用統計をさします。FRB(連邦準備制度理事会)が金融政策の決定にあたって最も重視する指標と言われ、為替市場での注目度は最高ランクです。

   米雇用統計は、労働省(U.S. Department of Labor)が毎月最初の金曜日に、ニューヨーク時間の午前8時30分に発表します(日本では米国がサマータイム(夏時間)なら21時30分、冬時間なら22時30分)。前月分の統計を速報値として発表すると同時に、改定値、確定値を合わせて発表します。つまり2回にわたって修正が加えられるのですが、これが決して小さくありません。例えば2013年2月分の非農業部門雇用者数は、速報値の23.6万人が1ヶ月後には33.2万人に改定されています。

  • 雇用統計は米国の主要な月次統計では最も早く発表されます(その半面あとで改定されるのですが)。雇用統計には業種別の賃金や就業者数も含まれているため、そこからGDP(国内総生産)などその月に発表される他の重要指標もある程度想像できます。雇用統計に注目が集まるのにはこうした理由もあるのです。

雇用統計の見方(1)

1.非農業部門雇用者数(NFP)

   雇用統計で最も注目を集めるのは非農業部門の雇用者数(NFP : Nonfarm Payroll Employment)です。農業部門を除く産業分野で民間企業や政府機関に雇用されている人の数です。なぜ注目度が高いかというと、FRBの金融政策に強い影響を及ぼすからです。FRBには重大な責務が二つあり、その一つは雇用の増大です(もう一つは物価の安定)。日本と違い、移民を受け入れている米国では人口増加が続いていますから、それに見合うだけ雇用も増加しなくてはなりません。一般的に雇用情勢を悪化させないためには最低15万人程度、失業率を上昇させないためには20万人程度が必要とも言われます。雇用者数の増減はまさにFRBの直接的な政策指標なのです。

   雇用者数の数字については注意を要する点があります。それは一過性の要因によって雇用者数が水増しされる場合があることです。例えば、国税調査などで大規模な臨時雇用があった時などは、そうした現象が見られます。このような場合は、雇用者数が伸びたとしても市場は素直に反応しません。ですので、事前予想については、表面的な数字だけでなくその背景についても情報収集を怠らないようにしたいものです。

2.失業率

   雇用者数の次に注目度が高いのは失業率です。これも雇用の増大と直接関係している指標だからです。失業率は、働く意欲がありながら職を得ていない人の率ですが、数字の見方として注意すべき点があります。それは、就職をあきらめて求職活動をしなくなった人は、失業者とはみなされない点。このため、雇用者数は伸びていない一方で、失業率は低下するという現象が起こることがあります。例えば、サブプライム問題リーマンショックの後では、金融関係の働き口が減少しました。そうした中、金融機関をリストラされた人が一時的に就職を諦めるということが起こったのです。

   そのため、失業率を見る際は、労働参加率もあわせて見る必要があります。労働参加率は、仕事に就いている人と仕事を探している人の合計が、全人口に占める割合です。労働参加率は好景気のときは60%台後半ですが、サブプライム問題の表面化以降は下降傾向をたどり、2013年6月時点で63.5%まで低下しています。一方の失業率も2009年をピークに下降傾向にありますが(同7.6%)、労働参加率の低下を考慮すると、見せかけの改善という側面は否めません。

  • 上述のように米国では景気と失業率の関係が薄れてきていますが、これは社会の構造変化に伴うものとの見方があります。一つは、米国の人口構成に大きな比重を占めるベビーブーマー世代が、2010年前後に退職したこと。これが、労働参加率の低下を招いたと考えられます。もう一つはパートタイム労働者の増加です。当然パートタイマーは失業者ではありませんが、正規雇用者よりも賃金が低く、生産性も低いため、経済への貢献度は相対的に劣ります。こうしたことから、失業率が低下しても、以前のような景気の浮揚感が生まれてこないというわけです。

3.事前予想

   雇用者数(NFP)と失業率については、発表前に通信社などが市場アンケートを行い、ニュースとして発表します。市場参加者は、予想の中心値とかコンセンサスと表現された具体的な数値を頭に入れて発表を待ちますので、相場はまずこの二つの数値に反応します。しかし、雇用統計にはその他にも様々な統計が含まれています。これらの指標に対しては、市場は少し遅れて反応します。このため、発表直後とある程度時間が経過した後では、為替相場は異なる動きをすることがあります。ではその他にはどのような統計が含まれているのか見ていきましょう。

雇用統計の見方(2)

1.人材派遣業の雇用者数

   中長期的な景気の動向を見るうえで参考になるのが人材派遣業(Temporary Help Services)の雇用者数です。これは、その名のとおり就労しているものの正規雇用(正社員)ではない人の数。通常、景気が悪化し始めると経営者はまず派遣スタッフを削減し、不景気になると正社員のリストラへ進みます。逆に、景気が良くなり始めて人手が足りなくなるとまず派遣スタッフで補い、景気に対して自信がもてるようになると正社員を採用します。このため、人材派遣業の雇用者数はNFPに対して先行性があるのです。景気の転換点を予測するうえで注目したい指標です。

2.平均時給と平均労働時間

   次に平均時給と平均労働時間について。これらは景気が良くなると上がり、悪化すると下がりますので、景気を占ううえで重要な指標です。この平均時給と平均労働時間を掛け合わせると、平均収入を求めることができます。さらに平均収入に雇用者数を掛け合わせると、農業に従事する人を除いた米国民の総収入を推定することができます。米国のGDP(国内総生産)は7割以上を個人消費が占めますが、その個人消費を左右するのが収入。平均時給と平均労働時間は、消費動向を予測するためには欠かせない指標なのです。

雇用統計の注意点

   米雇用統計は、市場参加者が固唾を飲んで待ち構えますので、発表直後は注文が殺到し、注文が成立しにくくなりあす。予想外の数字が出ると、相場が乱高下することもよくあります。こうしたことから、発表前からスプレッドは開き気味になります。米雇用統計の発表は短期売買を行うチャンスでもありますが、そうしたことに注意する必要があります。

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