円高

円高とは

   円高(えんだか)とは円が他の通貨に対して値上がりしていることです。例えば、1ドル=100円だった為替相場が1ケ月後に1ドル=99円になっていたとすると、1円の円高ということになります。

   100円から99円に下がっているのに高いというのはピンときませんね。でも、1ケ月前は1ドルを買うために100円だったものが99円ですむようになったのですから、円の価値が上がったわけです。ゆえに円高という言い方をします。それでも腑に落ちない方は、円が値上がりしたのではなくドルが値下がりしたと考えれば、納得しやすいと思います。モノの値段のように1ドルが100円から99円に下落したと捉えるわけです。

   為替相場は通貨の交換レートであり相対的なものですから、一方から見て下がっていればもう一方は上がっています。そしてそれは通貨の組み合わせごとの話しなので、ドルに対しては円高だけれど、ユーロに対しては円安という状況も起こりえます。ただ、通常は機軸通貨であるドルを基準に考するため、何も断りがなく円高と言えばドル円相場が前提になります。

円高の原因

   円高が起こる原因には以下のようなものがあります。

  • 貿易黒字の拡大
    貿易収支が黒字ということは、国内で外貨が余っている状態であるため、外貨を売って円に換える動きが生じます。こうした需給関係から貿易黒字は円高要因となります。
  • デフレの進行
    デフレは物価が下がる一方で通貨価値が上がる現象です。例えば、1ドル110円のときに一個330円だったビッグマックがデフレで300円になったとします。すると、ドル換算では3.0ドルしていたものが2.73ドル程で足りることになります。為替市場ではこれを調整するために、円高が起こります。つまり1ドル=100円になれば、300円のビッグマックは相変わらず3ドルです。これは購買力平価説の原理となっていることですが、デフレが為替相場に及ぼす影響は長期的なもので、中短期的には以下の要因が大きく影響します。
  • 金利の引き上げ
    仮に円金利よりもドル金利のほうが安いとすれば、ドルを円に替えて預金したほうが確実に収益が増えます。そのため、ドルを売って円を買う動きが起こり、需給関係から円高方向へのバイアスが生じます。もちろん、金利で儲けても為替差損を被ってしまえば元も子もありません。ですから、実際にこうした動きが生まれるにはある程度の金利差が必要なのですが、為替市場では金利動向を手掛かりにした仕掛け的な動きがしばしば起こります。
  • リスク警戒感の上昇
    為替市場でリスク警戒感が高まると円高の要因になります。一口にリスクと言っても様々ですが、主なものは国際的な資産(株、債券、土地等)価格の下落リスク、信用収縮のリスク、地政学的リスク、政治的リスク、国家財政のリスクなどです。こうしたリスクが顕在化してくると、相対的に安全な通貨に資金は向かいます。安全とみなされているのは、円、スイスフラン、ドルなどで、反対に新興国通貨からは資金が逃避します。

   以上は基本的な構図で、これらが複雑にからみあって為替相場は形成されます。例えばデフレは円高要因ですが、デフレ時は金利が下がっていますから、こちらは円安要因というわけです。また、現時点でどうかよりも方向性が重要です。貿易赤字が減少する方向であれば、それが不確実な将来のことであっても、為替相場は円高に反応します。

円高の影響

   円高が進むと、外貨建てのモノやサービスを購入する場合、より少ない円で買えることになります。例えば上の例で言うと、ハワイに旅行して3ドルのハンバーガーを買う場合、300円だったものが297円になるわけです。逆に、輸出業者にとってはデメリットになります。3ドルで売れば以前なら300円の収入だったのに、円高のおかげで297円に減るわけですから。逆に300円の収入を確保するためには、ドル建ての値段を値上げして売る必要があります。

   日本全体で考えると、円高になると輸入品の値段が下がります。ガソリンの値段は為替相場を比較的短時間で反映するので、実感として感じるでしょう。また、小麦粉など輸入に頼っている原材料が値下がりすると、麺やパンなど製品の値段に波及する可能性があります。これは円高のメリットです。

   一方、海外で製品を売っているメーカーは、円換算した収入が減るので円高は儲けを少なくします。日本は輸入した原材料を優秀な技術で加工して工業製品を作り、それを海外に売って生計を立てています。原材料の値段が下がるのはメリットですが、収入が減ったり競争力が低下したります。円高はその損得を合計すると、日本全体ではデメリットのほうが大きいと言えます。

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