インスタント・エクセキューションとマーケット・エクセキューション
インスタント・エクセキューションとマーケット・エクセキューションは、ストリーミング注文の執行方法の違いを指します。それぞれの言葉を直訳すると次のような意味です。
- インスタント・エクセキューション(Instant Execution)…直ちに執行する。
- マーケット・エクセキューション(Market Execution)…市場の状況次第で執行する。
もう少し詳しく説明するために、投資家が取引画面に表示される為替相場を見ながら、注文のタイミングを測っている場面を想定してみましょう。そこで注文ボタンを押すと、つぎのような違いが生じます。
インスタント・エクセキューションの場合
顧客が注文を出すと、画面に表示されていたレートで即座に約定します。まったく約定しない場合もありえますが、スリッページや部分約定は起こりません。この方式では、業者がリスクをとって注文の約定を優先させるからです。基本的にすぐにカバー取引を行いますが、順序としては顧客の注文を受けるほうが先です。なぜリスクをとるのかというと、理由は次の二つです。
- 「見たまま約定するのでスリッページは発生しない」というのはセールスポイントになる。
- 画面に表示したレートとカバー取引のレートはずれる可能性があるものの、業者にとっては有利も不利もあり得る。
マーケット・エクセキューションの場合
この方式では、業者はリスクをとりません。顧客の注文をそのままカバー取引先に流します。顧客が注文ボタンを押してから、実際に注文がカバー取引先に届くまでにはレイテンシが発生するので、相場が動いているかもしれません。そのため、マーケット・エクセキューションではスリッページが起こりえます。最近は顧客の側でスリッページの許容範囲を予め設定できるシステムが増えています。スリッページを狭く設定すると、安全性は高まりますが、約定しにくくなります。スリッページを無制限にすれば成行注文となり、必ず約定します。そのあたりのさじ加減は個人によって差がでるところです。また、流動性が高いメジャー通貨同士ならあまりスリッページの心配はいりませんが、トルコリラのようなマイナーな通貨では、思わぬスリッページが発生することもあるので注意が必要です。
どちらがいいのか
基本的に顧客側から見るとインスタント・エクセキューションのほうが安心ではありますが、有利なスリッページもありません。マーケット・エクセキューションでは有利なスリッページがあり得ます。以前は顧客側にとって有利なスリッページが発生すると業者が自己の利益にしてしまうケースがありましたが、近年では金融先物取引業協会の規制が厳しくなったので、そうした不透明な取引は無くなっています。