スリッページ

スリッページ(Slippage)は、FXの注文執行において、指定したレートと実際に約定したレートでずれ生じる現象のことです。もともとは逆指値注文の執行時に起こる価格のずれを指していましたが、現在では指値注文ストリーミング注文などでも広く使われています。

逆指値注文におけるスリッページ

slippage逆指値注文(損切り注文)は、為替相場が指定条件を満たしたらトリガーが引かれて、成行注文が出されるという2段構えになっている注文です。このため、指定したレートどおりに約定しないことが往々にして起こります。というのも、トリガーが引かれて実際に成行注文が約定するまでに、レートが動いてしまっているケースがあるからです。

例えばUSD/JPYを100円で買って、逆指値注文を99.00円に置いたとします。為替相場が下がってきて99.00をつけると、トリガーが引かれて成行注文が発せられます。レートが下って来ている中で執行されるので、さらに下がって98.99円で約定する可能性が少なくありません。また、市場のレートは必ずしも連続しているとは限りません。為替相場が急落・急上昇している時は、大きなスリッページが生じてしまいます。もちろん市場の動きが穏やかな時は、99.00円や99.01円で約定する可能性もあります。

またDD方式を採用している業者では、指定されたレートで約定することをセールスポイントにしている業者もいます。このような場合も、実際にはスリッページは生じていますが、業者側で差額を負担しているのです(参考記事:NDD方式とDD方式)。

指値注文におけるスリッページ

指値注文は指定レートかそれよりも有利なレートで約定するという注文方法です。ですから、顧客から見て有利な方向でのスリッページは起こりえます。例えば市場レートが100円のとき、99.00円で指値を入れたとします。為替相場が下がってきて99.01円をつけ、次に98.99円をつけたとします。この場合は98.99円で約定することになります。0.01円の有利なスリッページが起こるわけです。逆指値の場合とは逆で、指値がヒットする特はレートが顧客にとって有利な方向に進んでいるので、有利なスリッページが起こりえるのです。

ところがFX業者の中には、この例の場合でも、顧客との取引はあくまで指定レートの99.00円で約定させる者がいました。スリッページの分は自社の利益にしてしまうわけです。しかしこれは以前のことで、金融先物取引業協会がこうしたアンフェアな取引を厳しく規制するようになった結果、現在では見られなくなっています(下記参照)。

ストリーミング注文におけるスリッページ

ストリ−ミング注文というのは、画面に表示されているレートを見ながら、希望レートが表示された時点で買いまたは売りの注文ボタンを押す方式の注文です。この注文では、発注時の画面に表示されていたレートと約定値のずれがスリッページになります。このスリッページは、注文ボタンを押した時点とその注文が実際に約定する時点でわずかなタイムラグ(レイテンシ)があるために起こります。取引システムによっては、この差の許容範囲をあらかじめ指定できる機能が一般的になっています。

非対称スリッページの規制

2011年にスリッページに関するある事件が起こりました。これは米国のFX業者であるFXCM社が、スリッページを不正に操作していたことによって多額の罰金(2千万ドル)を科せられたというものです。同社のビジネルモデルは、基本的に顧客の注文は全てカバー取引先につなぐNDD方式でした。このタイプでは、顧客取引とカバー取引とで約定値に差異が発生する可能性があります。

FXCM社では、顧客にとって有利なスリッページが発生した場合は顧客に還元せず、自社の利益としていたのです。一方で不利な場合はそのまま顧客の約定値に反映させていました(これを非対称スリッページと言います)。米国当局(NFA)は罰金のほかに、不正で得た利益を2008年に遡って顧客に還元させました。この結果、FXCM社は廃業に追い込まれています。

この事件をきっかけにスリッページに関する規制が強まり、日本でも2013年に金融先物取引業協会の自主規制ルールとして、スリッページ規制が導入されました。これはスリッページ自体の発生を否定するものではなく、業者が非公正な操作を行うことを禁止したものです。

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