FXで失敗する六つの理由
FXでは8割の人が失敗すると言われます。実際のところは、為替相場の展開にもよるので一概には言えないでしょう。一定の短い期間を見れば、儲かって成功する人が多い場合もあります。ですが長い目で見れば、8割は失敗するというのも大げさではないような気がします。少なくとも、儲かる人より損する人のほうが多いのは事実ではないでしょうか。それには次のような理由が考えられます。
- エコノミストなど他人の意見に依存している。
- テクニカル分析の教科書を鵜呑みにして「だまし」にやられてしまう。
- 相場のハラハラドキドキが好きで建玉したくてしょうがない。
- 取引のスキルや経験が不足していて、上手くなる前に撤退してしまう。
- スワップ狙いの危険性に対する認識が不足している。
- 誰しもが持っている人間の本能が失敗に導く。
以下ではそれぞれの理由について考察していきます。
失敗する理由1…エコノミスト依存
FXをする以上はある程度経済や金融に関する知識が必要ですが、専門家のレベルという訳にはいきません。そこで新聞雑誌やウェブサイトで目にするエコノミストの意見を参考にする方が多いでしょう。しかし、そうした記事は参考にとどめておくべきで、拘泥してはいけません。将来のことが分かる人などいないからです。実際、A社のエコノミストは円高になると言い、B社のエコノミストは円安になると言っているなど日常茶飯事です。では当たったエコノミストの意見だけをその後の参考にすればよいかと言えば、それも危険です。次は外れたなんてこともよくある話しだからです。
エコノミストは皆サラリーマンですが、予想が外れたからといって出世競争から外れたり給料が安くなったりしません。全てのエコノミストは当たったり外れたりしているからです。それよりも、鋭い視点で説得力のある記事が書けることこそが評価のポイントなのです。もちろん彼らもできたら当てたいと思っているでしょう。しかし書き終わった時点から前提となった情勢は刻々と変化していき、予想外の出来事が起こったりします。ですから読者も臨機応変に対応する必要があるのです。
しかし記事に説得力があったりすると、ちょっとした洗脳状態にされてしまいます。そうなると、多少のことではその予想を捨て去ることができなくなります。建玉が曲がっても「あの記事は信頼できそうだからそのうち上がるさ」という心理状態になります。しかし最後は希望がついえて損切りにいたるという次第。あの記事さえ読んでいなければ、と後悔しても後の祭りです。相場を取り巻く環境は常に変化します。それに柔軟に対応するためには、自分で決断する力をつけなければなりません。優柔不断な人は相場では失敗するのが道理です。
- 参考記事:エコノミストは理路整然と曲がる
失敗する理由2…テクニカル分析の罠
テクニカル分析の教科書には「ゴールデンクロスは強気のサイン」「RSIが30%を下回ったら売られ過ぎ」といったことが書かれています。もちろんそれらは過去の研究に基づいたものなので、まったく信用できないというわけではありません。当たることのほうが多いのは事実でしょう。しかし問題は、外れることもあるということ。いわゆる「だまし」がついて回るのです。
必ず当たるか必ず外れるならその通りに、または反対の取引を行えば確実に儲かります。しかし当たったり外れたりするのが厄介です。五分五分なら問題はありません。そんな指標は誰も利用しないでしょうから。だいたい当たるけれどたまに外れるというのが問題なのです。そのせいで建玉をなかなか諦めることができないからです。これも判断は人任せというのと似ていて、テクニカル分析に依存しすぎるのも失敗する理由の一つです。
失敗する理由3…スキルと経験の不足
これは言うまでもないことかもしれません。FXに限った話しではなく、仕事でも趣味でもスキルと経験の不足による失敗は誰でも経験があるでしょう。問題は、その失敗がどのような結果を生むかです。失敗しても大目に見てもらったり、特に実害はないというなら反省して終わりです。しかしFXでは初心者もベテランも同じ土俵ですから、大目には見てもらえません。全て実損としてわが身に降りかかってきます。そしてFXスキルや経験が身につく前に大損をして相場から手を引いてしまうことが本当に多いのです。
失敗する理由4…ハラハラドキドキが好き
もともと人間の中には危険なものに惹かれるという人がいます。こういう人を「リスクラバー」と言います。リスクラバーがFXに手をだすと、収益を上げたいという目的もさることながら、とにかく建玉したいという欲求が強くなります。FXにギャンブルの興奮や勝った時の高揚感を求めているのかもしれません。危険を指向する人がFXに手を出すと失敗するのは目に見えています。
失敗する理由5…スワップ狙いの危険性
スワップ狙いというのは、FX特有のスワップポイントによる収益を狙って高金利通貨買い・低金利通貨売りの取引を行うことです。確かに両通貨の金利差から生まれる収益が確実に入ってきます。しかしスワップ狙いで建玉をする人は価格変動のリスクを軽視していることが多いのです。年間で10%に満たない収益のためにその何倍もの価格変動リスクを負うというのは愚かなことです。
高金利通貨はたいてい新興国通貨ですが、高金利であるということ自体様々な問題(インンフレや財政不足)を抱えていることの証拠なのです。なのにスワップ狙いの取引は中長期で保有することが前提となるので、多少の含み損を抱えても損切しようとしません。いわゆる塩漬け状態です。しかしこれは精神的にもよくありません。仮に損が確定していなくても、すでにそれだけでも失敗していると言ってよいでしょう。
失敗する理由6(これが最大)…人間のやっかいな本能
相場を予想することは確かに難しいですが、そんなにはずれてばかりではないはずです。アナリストの意見を参考にしたり自分でテクニカル分析をしたりして、相応の自信があるから取引するわけですから。実際、コイントスをするよりもましな結果になるでしょう。問題の一つは、外れた時の対処です。そしてもう一つは、当たった時の利の伸ばし方です。これらはスキルや経験が不足していることと関係があります。しかし、多くの経験を積んで知識やスキルも身につけたのに、結局は失敗して終わることも珍しくありません。それは人間の本能がFXでは失敗するような構造になっているからなのです。
逆に、そこに気づいて対処できている人が、利益をあげている2割の人たちなのです。たまたま運よく勝っただけの人は、続けている限りはいつか負けてしまいます。その結果として、8割の人が損をして退場することになるのです。
結局のところ、上に挙げた1〜5の理由は、突き詰めていくと全て6番目の理由と関連します。本能をコントロールすることの難しさは共通の理由なのです。次ページではこの点についてさらに詳しく解説していきます。
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