調整インフレ
調整インフレとは
調整インフレとは、政府や中央銀行が意図的に発生させるインフレのことです。基本的に貨幣の流通量を増やして物価を上げる政策であることから、マネタリー・インフレーション(Monetary Inflation)と言う場合もあります。
まずインフレについて簡単に整理しておきましょう。インフレはモノやサービスの値段があがることで、通常は自然発生的に起こります。原因はいろいろありますが、基本は需要が供給を上回ること。ただ、1〜2%程度のインフレは好ましいとされ、近年ではインフレターゲットを採用している中央銀行も少なくありません。しかしインフレ率が5%や10%になると、物価高が生活を直撃して、国民の不満が高まります。そうなると選挙で不利になるので、政府はそうした事態にならないように経済をコントロールします。
ではどういう場合に調整インフレという政策がとられるのでしょうか。それは主に次の二つのケースが考えられます。
- デフレからの脱却を目指す場合
デフレは物価が下がることですから、年金生活者などのリタイヤ世代にとっては好ましい環境です。一方、現役世代にとっても物価が下がること自体は悪くありません。しかしデフレということは社会全体で供給過剰になっているわけで、職が無かったり賃金が上昇しなかったり、マイナス面のほうが大きいのです。そこでほどほどのインフレにもっていくために、調整インフレを起こすわけです。 - 国の借金を目減りさせたい場合
日本政府は膨大な財政赤字を抱えています。そのほとんどは国民の豊かな預貯金でまかなわれています。銀行に預けたお金で銀行がせっせと国債を買っているからです。ですが、いずれそれも限界に達することは自明。そこで調整インフレを起こすわけです。インフレは通貨価値の下落ですから、借金は目減りします。もちろん、貸している側は損をします。結局は、財政出動や社会保障でいい思いをしたぶん、国民が国の赤字を負担するということです。
調整インフレとFX
最後に、調整インフレが行われた場合のFXの活用について触れておきます。インフレは通貨の価値が下落することですから、その通貨を持っていると損をします。そこでインフレに強い資産(不動産やインフレ連動債など)を買うか、外貨に換えて持つことが対策になります。
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後者の場合なら、外貨預金や外貨建て金融商品のほか、FXでもよいわけです。日本よりもインフレ率が低く、政治や経済が安定している国の通貨と円のペアが候補となるでしょう。ただし、スワップポイントは支払いになる可能性があります。インフレが起こっているということは、金利も高くなっているからです。一方、FXはコストが極めて安く、換金性にも優れています。いくつかの資産を組み合わせるなかで、うまくFXを活用することが肝要となります。