円安
円安とは
円安(えんやす)とは、円が他の通貨に対して値下がりすることです。例えば、1ドル=100円だった為替相場が1ケ月後に1ドル=101円になっていたとすると、1円の円安ということになります。
100円から101円に上昇しているのに安いというのはピンときませんね。でも、1ケ月前は1ドルを買うために100円ですんでいたものが101円必要になったのですから、円の価値が下がったわけです。ゆえに円安という言い方をします。それでも腑に落ちない方は、円が値下がりしたのではなくドルが値上がりしたと考えれば、納得しやすいと思います。モノの値段のように1ドルが100円から101円に上昇したと捉えるわけです。
為替相場は通貨の交換レートであり相対的なものですから、一方から見て下がっていればもう一方は上がっています。そしてそれは通貨の組み合わせごとの話しなので、ドルに対しては円安だけれど、ユーロに対しては円高という状況も起こりえます。ただ、通常は機軸通貨であるドルを基準に考するため、何も断りがなく円安と言えばドル円相場が前提になります。
円安の原因
円安が起こる原因には以下のようなものがあります。
- 貿易赤字の拡大
貿易収支が赤字ということは、外貨が不足している状態であるため、円を売って外貨を調達する動きが生じます。こうした需給関係から貿易赤字は円安要因となります。 - インフレ率の上昇
インフレは物価が上がる一方で通貨価値が下がる現象です。例えば、1ドル100円のときに一個300円で買えていたビッグマックがインフレで330円になったとします。すると、ドル換算では3ドルで買えていたものが3.3ドル必要になります。為替市場ではこれを調整するために、円安が起こります。つまり1ドル=110円になれば、330円のビッグマックは相変わらず3ドルで買えるわけです。これは購買力平価説の原理となっていることですが、インフレが為替相場に及ぼす影響は長期的なもので、中短期的には以下の要因が大きく影響します。 - 金利の引き下げ
仮に円金利よりもドル金利のほうが高いとすれば、円をドルに替えて預金したほうが確実に収益が増えます。そのため、円を売ってドルを買う動きが起こり、需給関係から円安方向へのバイアスが生じます。もちろん、外貨への転換にはコストがかかりますし、金利で儲けても為替差損を被ってしまえば元も子もありません。ですから、実際にこうした動きが生まれるにはある程度の金利差が必要なのですが、為替市場では金利動向を手掛かりにした仕掛け的な動きがしばしば起こります。 - リスク警戒感の低下
為替市場でリスク警戒感が緩むと円安の要因になります。一口にリスクと言っても様々ですが、主なものは国際的な資産(株、債券、土地等)価格の下落リスク、信用収縮のリスク、地政学的リスク、政治的リスク、国家財政のリスクなどです。こうしたリスクが顕在化してくると、相対的に安全な通貨に資金は向かいます。安全とみなされているのは、円、スイスフラン、ドルなどで、反対に新興国通貨からは資金が逃避します。リスクへの警戒感が緩むと逆の動きとなり、円は下落します。
以上は基本的な構図で、これらが複雑にからみあって為替相場は形成されます。例えばインフレは円安要因ですが、インフレ時は金利が上がっていますから、こちらは円高要因というわけです。また、現時点でどうかよりも方向性が重要です。貿易収支が黒字から赤字に向かう方向であれば、それが不確実な将来のことであっても、為替相場は円安に反応します。
円安の影響
円安が進むと、外貨建てのモノやサービスを購入する場合、より多くの円が必要になります。例えば、ハワイに旅行して3ドルのハンバーガーを買う場合、300円だったものが330円になったりするわけです。逆に、輸出業者にとってはメリットになります。3ドルで売れば以前なら300円の収入だったのに、円安のおかげで330円とかに増えるわけですから。逆に収入が300円のままでよければ、ドル建ての値段は値引きして売ることができます。
日本全体で考えると、円安になると輸入品の値段が上がります。ガソリンの値段は為替相場を比較的短時間で反映するので、実感として感じるでしょう。また、小麦粉など輸入に頼っている原材料が値上がりすると、麺やパンなど製品の値段に波及する可能性があります。これは円安のデメリットです。
一方、海外で製品を売っているメーカーは、円換算した収入が増えるので円安は儲けをかさ上げしてくれます。日本は輸入した原材料を優秀な技術で加工して工業製品を作り、それを海外に売って生計を立てています。原材料の値段が上がるのはデメリットですが、収入が増えたり競争力を高めたりすることができます。円安はその損得を合計すると、日本全体ではメリットのほうが大きいかもしれません。
- 関連語:円高