分別保管

FXにおける分別保管とは

   金融商品取引法(金商法)では、FXCFDを扱う業者が顧客から預託された取引証拠金を、自己の資金と分けて保管することを義務づけています。これを分別保管や分離保管と言います。業者は、たとえ一時的であっても、預かった証拠金を会社の経費支払いなどに当ててはいけないわけです。もしこれをすると、法令違反になり、金融庁から業務停止命令が出されます(参考記事:金融庁の処分)。

分別保管の方法

   FXが日本に導入された当初、分別保管の方法としていくつかの方法が法律で認められていました。しかしその後の法律改正を経て、2009年度には金銭信託以外は認められなくなりました。これを信託分離保管とか信託保全と言います。今では、顧客資産は全て信託銀行か信託業務を兼営する銀行にありますから、預けたお金が返って来なくなるという心配はまずありません。ただし、100%安全かと言うと、厳密にはそうとも言い切れないのです。その理由を解説するために、まず信託分離保管の仕組みから見ていきましょう。

信託分離保管の仕組み

   FX業者は顧客の資産残高を計算して、契約先の銀行に預けます。資産残高は、当初顧客から預かったお金に、取引で発生した損益なども加えて計算されます。分かりやすく言うと、計算時点で顧客に返還すべき純財産の額と言えます。そしてその額は毎週1回、金融庁に報告されています。

   この信託財産は日々の計算結果に応じて、業者が預け入れたり解約したりしていますが、所有権は個々の顧客にあります。つまり信託財産の受益人は個々の顧客という仕組みになっているのです。ただし信託契約に個々の顧客を記載することはできないので、代表者が選ばれます。これは二人いて、一人は業者の役職員、もう一人は第三者の弁護士等です。

   信託財産の日々の残高調整は業者代表者でOKになっています。しかし、FX業者が破たんした時は別です。このときは信託財産を全額解約することになりますが、これは第三者の代表者しかできません。これよって万一の場合の安全性が確保されていわけです。また、信託先の銀行自体が破たんした場合も、財産は信託法によって保護されます。

信託分離保管が100%安全ではない理由

   このように、顧客がFX業者に預けたお金の安全性は確保されているのですが、信託分離保管にはある不確定要素があります。それは、信託財産の運用方法です。ここにはFX業者の裁量が入る余地があるのです。もちろん、法律によって選択範囲は定められているのですが、元本保証のないものも認められいます。例えば、格付けの低い銀行への定期預金も可能です。

   信託財産の運用による収益は業者の収益になりますので、利率の良さにひかれて格付けには目をつむることもあるかもしれません。そして万が一その銀行が破たんすると、ペイオフ制度の対象となりますから、1千万円しか保証されないのです。これによって信託財産が毀損する可能性があります。その場合は業者が補てんするのですが、問題は業者にそれだけの財務基盤があるかどうかです。

   また、業者が破たんすると受益者代理人が個々の顧客へ信託財産を分配しますが、これには相当の時間が必要と思われます。まだ実際にこうしたケースは発生していませんが、すぐに全額返還されるというのは手続きの煩雑さから考えて難しいかもしれません。

過去の分別保管

   以下は、分別管理の方法が信託分離に一本化される以前に認められていた方法です。ご参考まで。

 
管理
方法
銀行等金融機関へ預貯金 信託銀行への金銭信託 カバー取引相手方への預託
解説 口座名義は『○○株式会社証拠金口』のように、証拠金管理用の口座であることがはっきりと分かるものでなければなりません。 元本補てん契約付きの金銭信託か、契約により顧客資産が保全される金銭信託の二通りの方法があります。 FX業者がそのカバー取引相手方へ、顧客から預かった証拠金を再預託するわけですが、これも認められています。
リスク たとえ上記のような口座名義であっても、法令上はFX業者の資産です。業者が破産手続きを開始すれば、預貯金口座の残高は差し押さえにあいます。顧客は一般債権者として、預けた証拠金を取り戻す手続きを開始せねばなりませ。これは時間も手間もかかりますし、どの程度回収できるかも分りません。また、業者が大丈夫でも、金融機関が破たんしてペイオフの対象となるリスもあります。ただ、決済用普通預金にしていれば全額保全されます。 たとえFX業者が倒産しても、上記信託契約により分別管理されている証拠金については、顧客資産として保全されますので安心です。また、信託銀行自体が破綻しても、信託資産は信託法により銀行の資産とは区別されますので、その点でも安心です。 カバー取引相手方が倒産した場合、直接に被害を被るのはFX業者です。通常、カバー取引相手方に預託する証拠金は、顧客から預託された証拠金総額の1割前後、多くても2割というところです。そのため、FX業者の財務基盤がしっかりしていれば、カバー取引相手方が倒産してもFX業者自身でその衝撃を吸収できます。しかし、財務基盤が弱い業者の場合、連鎖的に業者も倒産する危険もあります。そうなれば、1の場合と同様に、あなたは一般債権者として、債権を回収しなくてはなりません。

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