AブックとBブック

   ここではFXにおけるAブックとBブックの違いについて解説します。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、店頭FXには業者側で行っている注文処理に二つの形態があり、これをAブック(A Book)、Bブック(B Book)と呼んで区別しています。顧客から見ると外見的な違いはないので、意識する機会はあまりないかもしれません。しかし、口座を持っている業者がどちらのビジネスモデルを採用しているかは知っておくに越したことはありません。取引手法によっては大いに関係してくるからです。

   実は、AブックとBブックという区分は店頭FXだけにあります。同じFXでも取引所FXである「くりっく365」にはありません。それはなぜでしょうか。店頭FXは顧客と業者が相対で取引を行いますので、顧客の注文は取引所につながれるわけではありません。ここが取引所FXや株式取引と大きく異なる点です。では店頭FXでは顧客の注文はどのように処理されるのか。その違いがAブックとBブックの分かれ目なのです。取引所で注文が成立するという点でビジネスモデルが一つしかない「くりっく365」にはこうした違いがありません。

AブックとBブックの違い

   Aブックは、顧客の注文をFX業者がそのまま第三者に流すような形態をいいます。この場合、業者は仲介役(エージェント)にすぎません。これに対してBブックでは、FX業者自身が取引の主体となって顧客の注文を成立させます。この違いは、顧客側からは見えませんが、業者の内部では異なった処理が行われているのです。こうした違いは、NDD方式とDD方式と呼んで区別する場合もあります。

Aブックの取引形態

   Aブックの形態をとっている業者でも、相対取引であることは変わらないで、契約上は顧客と業者の間で取引が成立します。しかしその裏付けとして、業者と第三者との間でも取引が成立しているのです。この第三者とは(細かい話は置いておいて)インターバンク市場のメンバーである大手銀行で、リクイディティープロバイダーと呼んだりします。Aブックの場合、実質的にFX業者は取次ぎ業者の役割なので、顧客との間で利益相反の関係がありません。

Bブックの取引形態

   Bブックの形態をとる業者は、顧客の注文をそのままどこかへつなぐことはしません。顧客の買い注文に対しては自社の売りをぶつけて終了です。しかしそれだと、顧客と業者は完全に利益相反の関係になります。ですからまったくつながないわけではありません。一般的には自社のポジションをネッティングして、裸のリスクになっている部分については、ディーラーがリスクヘッジを目的に第三者と取引を行います。

収益構造上の違い

   では、FX業者はどのような理由からAブックとBブックを選択しているのでしょうか。これにはいくつかの理由がありますが、本質的には、リスクをとって高収益を追求するか、安全志向でいくかという経営判断かと思います。

   AブックにおけるFX業者の収益の源泉は、売値と買値のスプレッドやスワップから抜いている薄い収益の積み重ねです。ですから大儲けはできないですが、市場リスクからは距離を置くことができます。一方、Bブック業者のうま味は何と言ってもディーリング収益です。ディーリングと言ってもプロップハスウのような純粋な自己勘定ではなく、顧客との取引を最大限活用した取引です。いわゆる「向い玉」とまでは言えませんが、「FXは投資家の8割が損をする」といわれることを逆に考えると、Bブック業者のポジションは利益を出しやすいと言えるでしょう。しかし突然予期しない出来事が起こり、為替市場が大混乱した場合、自己ポジションが思わぬ損失を被るリスクは常に抱えています。

AとBのどちらを選ぶべきか

   そのため、Bブック業者はAブック業者に比べるとどうしても不透明感がただよいます。ティルトやストップ狩りの噂はBブックという形態だからこそささやかれると言えます。ただ、今では金融先物取引業協会の規制もあり、そうそう不正な行為はできなくなっていますが。

   そうした現状を踏まえて業者選びのポイントを考えてみましょう。まず優先すべきは、取引プラットフォームの使い勝手です。もちろん情報サービスなども重要です。そのううえで、いくつか候補がしぼられれば、経営方針を加味して決めることをお勧めします。ただし、職業的な個人投資家が行う大口取引や高頻度取引であれば、約定力を吟味することが最優先かもしれません。Bブック業者の場合、利益相反の関係からそうした取引に応じないケースがあるからです。

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