FXの両建は損

   両建(りょうだて)といのは、同じ通貨ペアの買い建玉と売り建玉を同量持つことです。つまり、為替相場の変動に対して中立な状態にすることです。こういう手法を初めて知った方は、『何の意味があるの?』と思われるでしょうね。実際のところ何の意味もありません。普通、両建は相場の予想がはずれて迷っているときに、一時的に避難するために行う行為です。つまり、維持すべきか損切りすべきか、あるいはナンピンすべきか決心がつかないときに、とりあえず両建にしてしまうのです。そして相場の見極めがついたら、片方をはずして残ったほうで勝負するわけです。

  • ここでは売り買いが同量となる両建を前提に解説しますが、一部が両建となるような場合も基本は同じです。なお、いずれも一時避難的に行う両建を指しており、頻繁な売買によって両建状態が生じるようなケースはテーマに含まれません。

   しかし、理屈から言えば両建するなら決済したほうが良いのです。両建も損失を確定させることに変わりはなく、手数料やスプレッドなどのコストが余計にかかるだけだからです。しかもFXの場合は、スワップポイントが発生するため、受け払いの差だけ確実に損失が累積していきます。

   ところが理屈はそうであっても、両建にもメリットがあるという人がいます。『両建にしている間は相場への関心が途切れないので、一生懸命考える。その結果、損失が取り戻せる可能性がある』というわけです。完全に否定するつもりはありませんが、決済して新たな方針で損を取り戻すほうが健全です。失敗をずるずると引きづるのはよくありません。それに、両建をはずすのは難しい判断です。どうしても利の乗った方からはずしたくなる誘惑にかられるからです。

両建に意味はない

   両建については、金融商品取引法の前にFXの規制法だった金融先物取引法を作るときにかなり議論されました。禁止すべきだという意見が多かったのです。その背景には、両建が手数料稼ぎと取引証拠金の増しに使われているという事情がありました。実際、商品先門取引ではそのような側面を持ち合わせていたのです。

   当時は対面営業が主体でしたが、営業マンにとって両建は打ち出の小槌でした。顧客が含み損を抱えたとき、損切りされてしまうともうそれっきりです。相場に懲りて資金を引き上げてしまうかもしれません。しかし、両建にしておけば取引が続きますし、手数料も2倍入ります。それどころか、両建をはずしたりまた両建にしたりして建玉を操作していけば、手数料を何回も稼ぐことができます。また、両建は顧客も受け入れやすいのです。さらに、当時のルールでは、両建するためにはその分の取引証拠金が必要でした。顧客から新たな資金を引き出す手段として、両建は非常に有効だったのです。こうしたことが先物業界の内外から指摘されていたので、両建は禁止すべしの声が高まったわけです。

   しかし結局、禁止までは盛り込まれませんでした。金融庁が金先法の施行前に行った講習会では『両建は推奨してはいけないし、できることを積極的に開示してもいけない。ただし、禁止はしない。』と説明されました。金商法になってもこれは変わっていません。顧客が選択すればやることは可能なのです(システムが対応していることが前提ですが)。

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