外貨資産への投資を考えています。為替相場の中長期的なトレンドについて教えてください。
為替相場は日々変動していますが、少し高いところから眺めてみると、数年間は続く大きなトレンドの存在に気づきます。これは為替相場の基本傾向を決めるファンダメンタルズは、そう目まぐるしく変わるわけではないからです。
例えば、下図はドル/カナダドルの月足チャートです。この中には二つの大きなトレンドが存在していますね。前半の上昇トレンドと後半の下降トレンドです。前者は9年4ヶ月(1991年10月〜2002年2月)、後者は5年8ヶ月(2002年2月〜2007年10月)の長きにおよんでいます。もちろん、途中には逆行する局面がありますが、大きな流れの存在が見てとれると思います。
なぜこのような大規模なトレンドが生まれるのでしょうか。背景には景気や経済成長のマクロ的な循環があります。ドル/カナダドルの場合は、一つにはコモデティー(商品)ブームのサイクルがあります。中国を筆頭としたBRICsの経済成長に牽引されて起こったブームは、2012年までに収束したといわれています。ご存知のように、カナダドルはコモデティー通貨の代表ですから、そうしたブームの動向とは密接に関係しているわけです(参考記事:カナダドルの特徴|FXによる中長期投資)。
次に金/ドルの長期チャートを見てみましょう。下図はその月足(対数チャート)ですが、約10年にわたって上昇トレンドをたどった金が、2013年に入って急落していることが見てとれます。一般的にドルと金は相反関係にあると言われ、この現象からも強いドルの時代が始まったとの見方が有力なのです。ではその背景には何があるのでしょうか。考えうるファンダメンタルズの変化をあげてみます。
- 長く続いた資源や新興国への投資ブームが終焉した
- シェ−ルガス革命によって米国の経常赤字が解消される(参考記事:為替相場とシェールガス革命)
- 欧州や日本のように人口構造問題が成長の阻害要因ではない
- 欧州がジャパナイズ化するなかで米国の強さが目立つ
- 米国を中心とした経済のブロック化が進行している
では肝心のドル/円はどうでしょうか。下図は月足ですが、カナダドルほどではないにしても、年単位のトレンドが存在していることに気づかれることでしょう。過去の経験から考えると、2012年から始まったドル高円安の流れは、この先数年は続く可能性が高いと考えることができそうです。
最後に、中長期的なトレンドを判断する方法について整理しておきます。
- まずは30年程度のチャートで大きなトレンドを把握する。トレンドの把握には移動平均も有効だが、遅行性があるのが難点。単純にチャートの山と谷の上値・下値が切り上がっていれば上昇トレンド、切り下がっていれば下降トレンドと考えられる。
- 長期トレンドの中にはそれに逆行する短期のトレンドが存在する。この修正局面はたいていは数ヶ月〜半年程度で終息するので、主トレンドへ復帰するのを待つ。
- 新聞をにぎわす材料には惑わされないこと。目先のトピックスで右往左往しても良いことはないので、不安や期待をあおる記事は読み流す。相場の根底にあるファンダメンタルズに関連したことだけに関心を払う。
- ファンダメンタルズは米国の為替政策、各国の金利政策や経常収支などが重要だが、プロでも見方はいろいろ。一般人が為替相場のファンダメンタルズを分析するには限界がある。
- やはり一番確実なのは、チャートをしっかり分析すること。ただし、あまりテクニカル分析には走らないほうがよい。単純に値動きだけをみて(または移動平均を加える程度)、大局を把握するようにする。