波動分析
為替相場は上昇する場合も下降する場合も、山と谷を繰り返しながらトレンド(方向性)を形成します。上昇トレンドでは、山の頂上と谷の底は徐々に切り上がっていきますし、下降トレンドの場合は徐々に切り下がっていきます。こうした山と谷で構成される波のような一連の動きを波動といい、その規則性や特性により相場を予想する手法が波動分析です。その古典とも言えるダウ理論とエリオット理論を取り上げて、波動分析のエッセンスを解説します。
ダウ理論
波動分析のパイオニアであるチャールズ・ダウ(ダウ平均株価の考案者)は、波動には3つのサイクルがあるとし、それぞれプライマリーサイクル、セカンダリーサイクル、マイナーサイクルと名づけました。プライマリーサイクルは1年〜数年間の長期波動で、セカンダリーサイクルは、プライマリーサイクルの中で数週間から数か月の中期の動きです。マイナーサイクルはセカンダリーサイクルの中で数週間程度の短期の動き。
また、ダウはプライマリーサイクルをさらに3つの局面に分けています。上昇トレンドの場合で言うと、第1の局面は先駆者が買いに入った段階、第2の局面は多数の市場参加者が買いに入ってくる段階、第3の局面は上昇トレンドの最終局面で、買いの勢いがピークを迎え、売り方針に転換する市場参加者が出始める段階です。
ダウは19世紀後半の人で、研究対象も当時の株式ですから、その理論をそのまま現在の株式や為替の相場にあてはめることはやや無理な面もありますが、基本的な考え方は今でも多くのテクニカル・アナリストに支持されています。テクニカル分析の定番の一つであることはまちがいありません。
エリオット波動理論
ダウによって研究された波動理論をさらに進化させたのが、ラルフ・ネルソン・エリオットです。彼は、波動を構成する要素は@波動の「パターン」、A波動相互の「比率」、B波動が要する「時間」の3つであると考え、比率から相場の反転時点や目標価格の推定を行いました。
こうした考えは、エリオット波動理論(Elliott wave principle)という名称で投資家に親しまれています。エリオット波動は上昇5波、下降3波の合計8波で構成され、最初に上昇波の1〜5があり、次に下降波のa〜cがくると定義しています。波はさらに144の小さな波で構成されると言っています。この数はイタリアの数学者であるレオナルド゙・フィボナッチが発見したフィボナッチ比率に基づいています。フィボナッチ比率はテクニカル分析でよく登場する要素です。
相場の起点である第1波は5つの波の中で最も短いことが多く、第2波は第1波のかなりの部分を戻す値固めの段階です。第3波は一番力強く、この波の時が最も活況となります。第3波が5つの上昇波で最短になることはありません。第4波は第2波と同様に値固めの波で、第4波の底は第1波の頂上より上になります。第5波は相場の天井圏を形成します。a波では出来高が減少し、b波は新しい下降トレンドにおける反発の波です。買い持ちしている場合は転売する最後のチャンスです。c波は上昇トレンドの終了を明示し、下値を試す局面です。
エリオットは、こうした相場のサイクルを、その規模によって次のように分けています。
- グランドスーパーサイクル … 100年以上
- スーパーサイクル … 50年
- サイクル … 10年
- プライマリー … 3〜5年
- インターミディエット … 30週〜50週
- マイナー … 10週
- ミニュット … 3〜5週
しかし、デイトレードやスウィングトレードを行う人は、さらに短いサイクルに注目する必要があるでしょう。重要なことは、大きなサイクルの中には小さなサイクルがあり、その中にはさらに小さなサイクルがあるということです。
波動分析のエッセンス
波動分析には応用理論もあり、それだけで一冊の本になるくらいです。しかし、テクニカル分析には常に言えることですが、理論を極めたからと言って相場で勝てるということはありません。それよりも、実戦では自分の『心』を管理することのほうが重要です(参考記事:FXの必勝法)。
波動分析は、相場の動きを波動として類型化し、規則性を見い出そうとするところに発想の原点があります。ただ、相場の動きかたには無限大のケースが考えられるわけですから、なかなか単純にはいきません。ですので、無理やりに『これは第○波だ』とか考えたりする必要はないと思います。波動理論の要所は次の点にあります。
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