UAEディルハムの特徴
ディルハム(Dirham)はアラブ首長国連邦(UAE)の通貨で、通貨記号はAEDです。同国はドゥバイ、アブダビなど7つの首長国で構成される連邦制の国です。日本は石油輸入量の約25%を頼っており、アラブ首長国連邦にとっても日本は最大の貿易相手国です。
アラブ首長国連邦は1997年にドルペッグ制を採用しました。つまり、ディルハム相場は常にドル相場と連動するようにコントロールされているわけで、現在は1ドル=3.6725ディルハムに固定されています。そのため、ディルハム/円とドル/円と同じ動きをします。為替相場の差益を狙うなら、あえて流動性の低いディルハム/円を取引する意味はないのです。にもかかわらず、投資家の間でディルハムに対する注目が高まることがあります。その理由は、ドルペッグ制の放棄や通貨切り上げの観測がくすぶっているからです。
ドルペッグ制をとっている場合、自国通貨をドルと連動させるために、金融政策の自由が縛られます。実際、2007年から米国が利下げを実施した関係で、アラブ首長国連邦も追随して利下げを行いました。しかし、国内景気は過熱気味で、インフレを抑えるために、本来は金利をもっと高くしたいのです。ドル安に連動してディルハム相場も下落傾向をたどっているため、輸入物価の上昇を招いている点も頭の痛いところです。
アラブ首長国連邦やサウジアラビアなどが加盟する湾岸協力会議(GCC)では、かつては加盟6カ国全てがドルペッグ制を採用していました。しかし、クウェートは自国通貨のディナールを段階的に切り上げ、2007年5月にはついにドルペッグ制を放棄しました。2008年4月には、同じくドルペッグ制を採用しているシンガポールドルも切り上げを実施しており、ディルハムもいつか切り上げに動くのではないかと考えられているわけです。
こうした事情から、『ディルハム/ドルを買っておけば、ペッグ制を採用している間は為替リスクがなく、引き上げられたら利益になる』と考える投資家がいます。しかし、その結果スワップポイントの逆転現象が起きることに注意する必要があります。短期金利はドルよりもディルハムのほうが高いので、通常ならディルハム買いドル売りのポジションを組めば、スワップポイントは受け取りになります。しかも、為替リスクがないとなれば、濡れ手に泡です。しかし、自由市場ではそんなうまい儲け話しはありません。リターンがなくリスクしかない取引は誰も引き受けてくれないからです。その結果、ディルハム買いドル売りの取引では、スワップポイントは支払いとなります。こうした現象は、人民元の切り上げ前にも見られました。インサイダー取引でもない限り、リスクとリターンはバランスするのが市場取引の原則です。