ルーブルの特徴

ルーブル取引の概要

   ルーブルはロシア共和国の通貨単位で、通貨コードはRUBです(参考:通貨名&通貨コード)。為替市場での取引量が少ないため、FXの銘柄として扱っている金商業者はごく限られています。扱っている場合でも、円とのペアは設定されておらず、取引時間にも制限があります。それでも、値動きが大きいため、投機の対象として選択肢の一つにすることは可能です。

   実際、2014年の夏場から半年足らずの間で、USDRUB(米ドル/ルーブルのペア)は2倍に値上がりしています(2014年12月時点)。結果論ですが、EU(欧州連合)が8月1日に対ロシア経済制裁を発動したときにUSDRUBを買っていれば、大儲けをすることができたわけです。

   ルーブルの特徴は何と言っても相場変動が激しく何度も暴落を経験していることです。そこで、過去のルーブルの暴落について検証してみることにしましょう。

ロシア危機(1998年)によるルーブル暴落

   ロシア危機の背景は、今回と同じく原油相場の下落による財政不安です。そこへ政治不安やアジア通貨危機が重なり、ロシアから西側の資本が逃避。危機発生前には6ルーブル程度だった対ドル相場は、危機後には27ルーブル前後まで下落しました。しかしその後も下げが止まらず、2002年末に32ルーブルまで下げてようやく底を打ちます。危機前にUSDRUBを買えていたら、5倍以上になったわけです。その後、世界景気の好調などを背景に5年半ほどかけて23ルーブルまで上昇しますが、次の暴落がやってきます。

リーマンショック(2008年)によるルーブル暴落

   これはまだ記憶に新しい人も多いと思います。サブプライム問題からリーマンショックにいたる世界的な金融危機のなかで、ルーブルも暴落しました。ほんの半年の間に、23ルーブルから36ルーブルまで約5割も下げたのです。ただこの時はルーブルに固有の要因だったわけではなく、背景となった世界的な信用収縮FRBの迅速な対応によって収束。2年半後には28ドル程度まで回復しています。それでも回復率は7割ほどですが。

逆オイルショク(2014年)によるルーブル暴落

   そして今回の暴落です。この年、ロシアのウクライナ侵攻を受けた経済制裁でロシアの経済はある程度ダメージを受けていました。そこに起こったのが原油相場の急落。WTIの相場は、6月頃には110ドル近くまで上昇していましたが、以後はつるべ落としのように下げ、翌年1月には45j前後まで下げています。半年で半値になってしまいました。もう一つの指標である北海ブレントも、5年8か月ぶりに50ドルを割りました(北海ブレントは通常WTIよりも5〜10ドル高い)。

   この裏にサウジアラビアによる相場操縦がある、と言う説があります。理由として、一つにはライバルであるシェールオイル産業に打撃を与えるため(参考記事:為替相場とシェ−ルガス革命)。既に稼働しているシェールオイルの生産コストは66ドル程度と言われます。また新規開発案件も、WTIが50ドルを割ると大半が採算割れになると言われます。原油相場の低水準が続くと、シェールオイルの開発が進まなくなるわけです。

   また、ロシアとイランに経済的打撃を与えるため、という説もあります。両国ともサウジアラビアにとって政治的・宗教的にうとましい相手です。さらにうがった見方では、ソ連再統一の野望を抱くプーチンを阻止したい米国の意思も反映しているという人もいます。一方で、単純に需給関係やOPECの崩壊に原因を求める関係者もいます。

ルーブル相場のキーポイント

   ロシアという国は軍事力や領土の面では大国ですが、経済的にはまだまだ発展途上です。BRICsの一員でもあり期待は高いのですが、国家財政は原油や天然ガスを主とした資源に依存しており、不安定です。世界的に景気がよく資源価格が高いときは好調ですが、値下がり局面に入ると途端に元気がなくなります。

   2014年のルーブル急落も背景には原油相場の急落がありますが、やはり資源価格の動向がルーブル相場のキーポイントとなりそうです。上記のように政治的・経済的な思惑に加え、世界的な景気減速懸念もあって、早々の立ち直りは考えにくい環境です。値ごろ感だけで手を出すのは危険だと肝に銘じておくべきでしょう。

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