米株の長期上昇と為替相場

米国株の長期上昇局面

米国株は、リーマンショックの半年後である2009年3月の大底をつけた後、2018年6月現在まで上昇トレンドをたどっています。上昇期間は既に9年3か月に及びます。これは、1990年台の10年間に次ぐ長さです。こうした長期上昇の背景には、それを後押しする景気の拡大があります。1か月後の2018年7月には、米国の経済成長と雇用の改善が10年目に入ります。これも、1970年以降では最長であるクリントン政権下(1993年〜2001年)での10年間に匹敵します。

足元の米国株は、上昇トレンドが始まった当時から約4.2倍(S&P500)になっています。経済成長下における株式の長期保有がいかに有利かということの証左です。しかし、株式相場が大きな調整局面もなく永遠に上昇し続けることはありません。いつかは下降に転じます。しかも、一旦下降に転じるとそのスピードは上昇局面よりも早い傾向があります。その場合、為替相場も無関係ではいられません。基本的にホットマネー新興国通貨から逃げ出して、安全通貨に向かう傾向があります。つまり円高のリスクが高まるのです。もちろん世界経済が後退局面に入ると、日本の貿易収支が悪化して需給面では円安要因にもなり得ますが、市場のリスクアペタイトが低下することには注意が必要です。

下降局面への転換

では現在の長期上昇局面はいつ終わるのでしょうか。もちろんそれが分かれば苦労はないのですが、ヒントはあります。まず10年目の入ろうとしている景気拡大局面は、景気循環的に考えてせいぜいあと1〜2年ではないかということ。もし政治的リスクや地政学的リスクが深刻化すれば、それが景気拡大を終わらせる 引き金になる可能性があります。

そうした事態が起こらないとした場合、最も注目すべきは米国金利の動向です。具体的には長短金利の逆転現象が起るかどうかです。通常、先進国の金利は長期になればなるほど高くなります。しかし景気過熱などの理由で、これが逆転することがあります。金利を上げすぎてオーバーキルといわれる状態になると、景気の拡大は終焉を迎えます。近年では80年、90年、99年、07年の4回、この現象が見られていますが、いずれの場合も、遠からず株価が下降局面に入っています。そのため、イールドカーブ(金利曲線)の動向には注意が必要です。また、米国の短期金利を代表するFFレートと、長期金利を代表する10年債利回りは常々チェックしておきたいところです。これらは下記のサイトで確認することができます。

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