移動平均のクロス
移動平均のクロスとは、複数の移動平均が交差する現象をさします。2本の場合をダブルクロス、3本の場合をトリプルクロスと言います。ダブルクロスについては、前ページの「移動平均」でもとりあげましたので、補足としてサインの信頼性を考察します。続いて、非常に重要な売買サインであるトリプルクロスを解説したいと思います。
移動平均のダブルクロス
クロスが起こった状況によってサインの信頼度に差があります。以下、信頼度の高い順にランキングしてみました。
1.信頼度の高いサイン
 これらは有効な建玉のサインです。特にゴールデンクロスが長い陽線、デッドクロスが長い陰線とともに出現すればなおさらです。下の図1ではCが注目です。長期線が横這いから上昇に転じかけているなかでゴールデンクロスが起こっています。比較的長い陽線も出ており、信頼性の高いサインです。
- 参考記事:ローソク足の見方
2.比較的信頼度の高いサイン
- 長期線が下降から横ばい転じた中で起こるゴールデンクロス
- 長期線が上昇から横ばい転じた中で起こるデッドクロス
 長期線が横ばいになっている局面では相場はトレンドを失っています。その中で起こるクロスはだましとなる可能性もありますが、状況次第では1以上に有効なサインである場合もあります。
3.信頼度が低いサイン
- 長期線が下降する中に起こるゴールデンクロス
- 長期線が上昇する中に起こるデッドクロス
 長期線と短期戦の方向が異なるクロスは(×形のクロス)はだましとなるケースも多く、注意が必要です。後追いで長期線も反転してくるようなら、信頼性は高まります。図1ではAが相当します。
4.注意を要するサイン
- 長期線が上昇に転じてからかなり日柄が経過した後に起こるゴールデンクロス
- 長期線が下降に転じてからかなり日柄が経過した後に起こるデッドクロス
 有効性は為替相場のその時々のスケールに左右されます。スケールが小さい場合はだましとなってしまう危険をはらんでいます(図1ではBが相当)。スケールが大きければ利益が得られますが、すべてのチャンスをものにする必要はありません。無理はしないことです。
移動平均のトリプルクロス
弊社がテクニカル分析の中でもっとも信頼性が高いと見ているのは、このトリプルクロスです。トリプルクロスは3本の移動平均が同時に交差することをいいます。ただ、現実的には同時に交差するということはめったにないので、それに近いパターンも含めて考えます。また、クロスという事象が重要なのではなく、「波が同調すること」に意味があります。
1.相場は波の集合体である
相場は山と谷を繰り返して形成されます。つまり波のような運動と言えます。そこで古くから、波動分析という手法が研究されてきました。実際、移動平均を引くと、まさに波のような姿を見ることができます。さらに、複数の移動平均を引くと、一つの相場の中にも、いくつもの波のサイクルがあることに気づきます。
ここで注目したいのは、各移動平均の距離です。拡大しているときもあれば縮小しているときもあります。拡大しているときは相場の動きが急なとき。たいていはトレンドが発生しています。縮小しているときは相場の動きが落ち着いていたり、方向性を見失っている場合です。このような状態から、相場に次の動きが出てくると、各移動平均は同調した動きを示します。ここがチャンスなのです。昔から相場の格言に「もちあい放れにつけ」という金言があります。3本の移動平均が収斂(しゅうれん)状態から拡散へ移行する局面では、まさにもちあい放れが起こっているわけです。
図2はトリプルクロスの理想的な例です。クロス前は上から長期線・中期線・短期線だった順位がクロス後には短期戦・中期線・長期線に一気に入れ替わり、日足が最上位に出ています。なかなかお目にかかれない事象ですが、強力なサインです。週足で出ればかなりの収益が見込めるでしょう。
次にもう少し出現頻度の高いパターンが図3です。クロスのタイミングは少しずれていますが、注目したいのは、Bの陽線で短期線・中期線・長期線が一気に上向いていることと、3本があまり離れていないことです。つまり、この時点で短波・中波・長波の三つの波がシンクロしており、一定期間は相場がその方向へ動くことが期待できます。Aの陰線も注目ポイントです。
2.トリプルクロスで使用する移動平均
トリプルクロスを見るときは、あまり長期の移動平均は使いません。3・6・9や5・10・15などの組み合わせがよいでしょう。長めにすると、現象そのものがほとんど起きなくなってしまいます。
3.トリプルクロスの決済
トリプルクロスは建玉のタイミングを計るための手法です。その後にトレンドがどれだけ長く続くかは分かりませんから、利食いのタイミングは別の手法で判断する必要があります。例えば次のようなものが代表的な手法です。どちらが有効かは一概には言えません。
- あらかじめ一定の値幅を決めておく
- 短期戦(中期線や長期線を基準にしてもOKです)の方向が変わるまでポジションを保有する
4.トリプルクロスのだまし
トリプルクロスも100%当たるということはありません。しかし、万が一だましとなった場合は、勇気をもって途転することです。トリプルクロスがだましとなるような背景には何か強い材料や勢力が出現したと考えられます。であれば、素直についていけばよいのです。結果的には利益を手にすることができるでしょう。
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