乖離(かいり)

乖離とは

   乖離(または乖離線)は、現在の値段が移動平均からどの程度離れているかを示したチャートです。下図の上段はバーグラフと移動平均、下段がその移動平均をベースとする乖離です。欧米ではそのまま「kairi」という名称で通っています。

乖離

   乖離は移動平均からの距離を示したグラフですが、距離を測る単位には%を用います。例えばドル円相場の場合、移動平均の値が100円で現在値が110円とすると、乖離はプラスの10%。現在値が90円だとマイナスの10%です。そのため乖離チャートはゼロラインを挟んで上下に往復するようなイメージになります。その意味ではRSIストキャスティックのようなオシレーター系のテクニカル分析とも言えますが、固定された上限値・下限値はありません。

乖離の使い方

   では乖離の使い方について見ていきましょう。基本的な目的は、相場の平均回帰性を利用することにあります。平均回帰性とは現在値が移動平均から大きく離れると、いずれは平均値に向かって戻るという習性を言います。ですから、建玉の仕掛け時に乖離を使う場合は逆張りの戦法になります。もちろん利食い時の判断に利用することもできます。

   図はユーロ円の月足をプロットしたもので、約25年という長期のチャートです。上限が20%近辺、下限が25%近辺にあることが見て取れます。下限のほうがより乖離率が大きくなるのは、下げ局面のほうがオーバーシュートしやすいという経験則に符合しています。十分に規則性が認められますが、単純に上下の抵抗線に達した時に仕掛ければよいというものでもないようです。

乖離

1.T1〜B1

   では左から順に乖離と相場との関係を確認していきます。T1ではわずかに20%ラインに達していませんが、乖離のピークと相場のピークが一致しています。ですから、20%の少し手前から売り上がっていたら(用語:売り上がり)1年後には大きな利益を手にしていたことになります。B1でも25%ラインの手前から買い下がっていれば(用語:買い下がり)2か月後にはそこそこの利益が得られます。しかし完全なボトムが訪れるのは2年後です。ここで重要なのはダイバージェンスが見られることです。乖離分析ではダイバージェンスがよく見られ、チャンスを暗示します。もちろん乖離分析だけで完全な判断はできません。フォーメーション分析なども併用することが重要です。

2.T2〜B3

   T2ではその数か月後に相場のピークが来ています。ここでも資金に余裕をもって売り上がっていれば、約2年後には膨大な利益を得られます。B2からB3に至る下げはまさにセリング・クライマックスの局面です。もしその手前から買い下がっていたとしたら、苦しい場面です。もちろんこれは月足なので小幅に利食える場面はあるのですが、先の見えない実戦ではそううまくいきません。ここは資金の余裕度が勝負を分けるところです。

3.T3〜T5

   T3とT4ではそこそこの利益が得られます。B4〜B6では大規模なダイバージェンスが起こっています。この間、B4とB5では数か月以内にそこそこの利益が得られますが、大底ではありません。注目したいのは、乖離線が三角もちあいを形成していることです。乖離では乖離率が最も重要ですが、乖離線の形も分析対象です。トレンドラインを引いてみるのも有効です。そしてB6で本格的な反転に転じ、膨大な利益を得られることになります。はたしてT5ではどういう結果が得られるでしょうか。

  • 筆者の経験では、乖離は時間足や日足よりも週足・月足で利用したほうが有効と思います。最適な移動平均と乖離率の組み合わせを見つけると、相場が持つ習性に何か不思議なものを感じてしまいます。

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