為替相場の抵抗感を感じよう

抵抗感とは

   FXは長期投資から回転売買までいろいろなスタイルで利用できますが、デイトレードスキャルピングのような短期売買では、為替相場の抵抗感を察知することが重要になってきます。抵抗感というのは、順調に上げていた(もしくは下げていた)相場が前へ進まなくなって、向かい風を感じるような状況を言います。ファンダメンタル分析ともテクニカル分析とも違って、抵抗感は何となく感じるものです。経験で養った勘がものをいいます。ちょっとオールドファッションかもしれませんが、ごく短期の売買には欠かせない要素と言えるでしょう。

短期筋が重視する抵抗感

   1分足や5分足のようなごく短期のチャートを日がな一日眺めていると、相場が生き物のように思えてきます。例えて言うなら、土の中を手探りで進むモグラのような感じでしょうか。そういう動きを作り出しているのは、主に短期筋と呼ばれる人たち。一日の中で何回も売買を繰り返し、薄い利益を積み重ねるように取引をするプロたちです。いわゆる実需筋や、投機筋でも中長期派はそんなに頻繁には取引をしません。もし市場がそういう参加者だけなら、為替相場はあまり動かないでしょう。しかし実際の相場は一日のうちでも目まぐるしく変化します。何か経済指標が発表されたりニュースが出たわけではなくても、常に相場は動いています。それは短期筋がせめぎあっているからです。

   彼らはテクニカル分析ももちろん使いますが、案外”勘”を重視している人が多いのです。一般投資家から見ると、プロのトレーダーが勘で相場をしているというのは意外かもしれません。ただ、この勘というのは上がるか下がるかを第六感で当てるという類のものではありません。『この水準は抵抗感が強いな』『もう少しで抜けそうだな』『しばらくは値動きが軽そうだ』という雰囲気を察知することを意味します。

為替相場は手探り

   先ほどのもぐらの例えに戻りましょう。値動きというもぐらは目が見えないので、それこそ手探りで進んでいきます。土が軟らかいとどんどん前へ進んでいきますが、ときおり固い箇所に突き当たります。すると、進めないものかどうかひとまず再挑戦してみます。それで突破できればまた前へ進みますが、どうも突破できそうにないと感じたら、いさぎよく方向転換します。相場もそんな感じなのです。

   抵抗感が強いところは反対注文の層が厚いのです。ある場合は実需筋の大口注文が置かれているのかもしれませんし、ヘッジファンドが待ち構えているのかもしれません。あるいは、短期筋の利食いが溜まっているのかもしれません。しかしどこが固いのかは誰にも分かりません。インターバンク市場ではどこにどれだけの注文があるというルーマが頻繁に流れますが、信憑性を知っているのはルーマを流した当人だけです。

テスト→抵抗感→方向転換

   どこに強い抵抗があるか分からない以上、相場の流れには逆らわずに付いていくしかありません。ただ、そうこうしているうちに、相場のリズムが止まるところが出てきます。この相場のリズムというのは、例えば上昇基調の場合だと、押し目では前の安値を下回らず、上げに転じると前の高値を更新するというリズムです。ところが、押し目から上げに転じたのに前の高値で止まってしまい、また押し戻されるという場面が出てきます。何度かテストしますが、やはり新値を取れません。抵抗感が市場全体に広がります。

   そうなると短期筋は『ん?おかしいぞ』と感じるわけです。そうやってリズムが変調したやさき、相場がドン!と下げます。短期筋の中でも大口の参加者が『ここまで』と判断したのです。これで流れが変るというパターンは、日常茶飯事と言ってよいでしょう。その他大勢の短期筋も売り方針に転換して、また相場を追いかけるというわけです。

   このときの判断はまさに勘です。もちろん、ある程度はテクニカル分析でも判断できますが、だましも多いので、銀行のディーラーでも勘に頼る人は案外多いのです。結局のところ、相場は短期筋を中心に常に抵抗線をテストする動きの連続と言えるでしょう。

中長期取引と抵抗感

   ここまでは為替相場が示す抵抗感とデイトレードの関わりについて話してきましたが、一般投資家が主戦場とする中期的な取引でも抵抗感は無関係ではありません。日足レベルでも抵抗感が感じられる時があるからです。よく見かける「上値が重い」とか「下値が固い」といった表現は、抵抗感が出ていることを示しています。その結果、ダブルボトムとかソ−サーボトムといったパターンが現れるわけです。

   投機筋が抵抗感から方向転換を余儀なくされれば、それは大きなチャンスということになります。為替相場では、ファンダメンタルズは変わっていないはずなのに相場の流れが変わった、ということがあります。そういう時は実需筋の注文が待ち構えていて、それによる抵抗感が方向を変えたのかもしれません。後講釈はエコノミストに任せるとして、投資家としては何はともあれフォローしたい局面と言えるでしょう。

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