FXの注文方法とその使い方

   FXで役立つ注文の種類とそれらの使い方をご紹介します。ただ、業者によって利用できる注文は異なりますし、細かい仕様にも差異があります。実際に取引を行う場合は、業者が交付する資料等でご確認ください。

成行(なりゆき)注文の使い方

   成行注文(Market Order)は、約定レートを指定しないで出す注文方法で、注文が受け付けられた時点のレートで約定します。つまり、注文の成立レートを為替相場の成行にまかせるわけです。具体的には、その時点で出ているビッドで売り、オファーで買うことになります。

   成行注文で注意したいのは、約定レートが画面に表示されていたレートと微妙にずれる場合があることです(スリッページ)。これは、注文がシステムに受け付けられ、処理された時点のレートで約定するからです。FXが日本に導入されたころは、成行注文でも約定レートを何秒間かは保証する業者がけっこうありました。しかし業者側がリスクを負うため、手数料競争の激化とともに消滅してしまいました。

   成行注文は、約定レートを指定する注文(指値系)よりも優先して約定しますので、レートよりも約定させることが先決という場合に用います。例えば、リアルタイム・チャートやプライスボード(相場表)を眺めながら『今がチャンスだ!』と思ったときなどに用いるわけです。

指値(さしね)注文の使い方

   指値注文(Leave Order)は、注文を出す時にあらかじめ希望する約定レートを指定して出す注文方法です。ふつうは、指定したレートで約定しますが、有利なレートで約定することはありえます。ただし、不利になることはありませんのでご安心を。もし指値注文が指定レートよりも不利なレートで約定したら、それは取引システムの障害か業者に問題があります。

   指値注文は、レートを指定できるので安心である反面、市場の実勢がそこまで届かず、チャンスを逃してしまうケースもあります。指値の決め方は取引の成果を左右する大事なキーポイントの一つと言えます。

逆指値(ぎゃくさしね)注文の使い方

   逆指値注文(Stop Order)は、指定したレートよりも下がったら成行で売り、上がったら成行で買う、という注文方法です。『上がったら買う?』と不思議に感じられた方もいらっしゃると思いますが、使い方は二つあります。メインとなる使い方は、損失の拡大を一定水準で止める損切りを行う場合。逆指値注文をストップ・オーダーとかストップロス・オーダーというのはそのためです。例をあげると、買い持ちしたものの為替相場が下落し、含み損を抱えているときに、○○円以下に下がったらそのときは損切ろう、というケース。FXでは粛々と損切りが実行できなくてはなりませんから(そう度々あっては困りますが)、逆指値注文は重要な注文方法です。

   もう一つの使われ方は、抵抗線を抜けた場合に、為替相場の流れに乗っていくことを狙うもの。例えば、為替相場がボックス圏でもちあいの状態にあり、上値の抵抗線を抜けたら一段高になると予想している場合。抵抗線の少し上あたりに逆指値の買い注文を置いておきます。もしボックス圏を上抜ければトレンドが発生する可能性が高いので、その流れに乗れるというわけです(参考記事:もちあい放れにつけ)。

イフダン(IFD)注文の使い方

   イフダン(If Done)というのは、『もし注文が約定したら』の意味です。同時に二つの注文を出しておき、第一の注文が成立したら、第二の注文が自動的に発注されるという注文方法で、連続注文とも呼ばれます。例えば、新規の指値注文と、それが約定したときの決済の指値注文をペアにして出しておくというようなケースです。

   いつも為替相場をウォッチしていられない方には重宝な注文方法ですが、それ以上に、新規注文を出すときに決済までプランニングしておくことに価値があります。人間だれしも「利食いは早め、損切りは遅め」という傾向があります。イフダン注文はこれを防止する有効な手法なのです。

オーシーオー(OCO)注文の使い方

   オーシーオー注文は、同時に二つの注文を出しておき、一つの注文が成立したら、もう一方の注文が自動的にキャンセルとなる注文方法です。新規注文の場合でも決済注文でも利用できます。OCOは One side done then Cancel the Other order の略です。

   使い方としては、例えば、為替相場がもみあっているときに、上値抵抗線で売り注文、下値抵抗線で買い注文を出しておき、どちらかが約定したら、一方を取り消したい場合。あるいは、すでに持っている建玉に対して、利食い注文(指値)と損切り注文(逆指値)をペアで出しておくような場合などに利用できます。

トレーリングストップ注文の使い方

   トレーリングストップ(Trailing Stop)はトレール注文ともいい、逆指値注文が発展したものです。相場の変動に合わせて、逆指値注文の指定レートが自動的に引き上がる(または引き下がる)機能を持っています。例えば、1ドル=100円で買い持ちしているとき、1円幅のトレーリングストップを入れたとします。この状態では、99円で逆指値を入れているのと同じです。その後、相場が幸いにも上昇したとすると、その上昇分だけ逆指値のレートも上がるのです。ただ、相場が下がったからと言って、逆指値のレートも下がるというわけではありません。つまりこんな具合です。

約定レート 相場 トレーリングストップ
実勢レート 変動幅 逆指値 変動幅
100円 100.00円 99.00円
100円 100.50円 +0.50円 99.50円 +0..50円 0.50円
100円 101.30円 +0.80円 100.30円 +0.80円 1.30円
100円 100.70円 −0.60円 100.30円 0.70円
100円 101.70円 +1.00円 100.70円 +0.40円 1.70円
100円 103.00円 +1.30円 102.00円 +1.30円 3.00円
100円 105.00円 +2.00円 104.00円 +2.00円 5.00円
100円 104.00円 −1.00円 実行 4.00円

   トレーリングストップは、大きなトレンドが生じたときにはできるだけ利益を伸ばそうという考え方に基いた注文方法です。例えば、息の長い上昇相場であっても、途中には押し目が入ります。トレンドを崩さない押し目は無視して建玉は維持するけれども、一定以上の下げが出たらトレンド終了のサインと考えて決済するわけです。もちろん、ちょっと上昇しただけで反落し、きり上がった逆指値で早々と損切りになってしまう、なんていうこともあります。そのあたりが、トレーリングストップの難しいところです。

ストリーミング注文の使い方

   いわゆるストリーミング注文は、取引画面に表示されている為替相場を見ながら、2ウェイプライスのどちらかをクリックして発注します。買いたい時はオファー(アスク)、売りたい時はビッドを選びます。あらかじめ通貨ペアと数量を指定しますが、注文期限や約定価格は指定しません。画面で見ている価格で約定させたい場合に使用します。

スプレッド

   ストリーミング注文を実行した結果は、注文画面で見ていた価格で全量約定するか、又はまったく約定しないかといずれかになります。成行注文ではスリッページが発生する可能性がありますが、ストリーミング注文では発生しません。クリックした時点から価格が動いてしまうと約定しないのです。ですから、約定を優先させたいなら成行注文を、スリッページを回避したいならストリーミング注文を選択するとよいでしょう。市場が落ち着いているときは大きな差はありませんが、雇用統計の発表直後などボラティリティが高くなっている時は、売買方針によって使い分ける必要があります。

ビッド逆指値注文の使い方

   ビッド逆指値は、注文の執行基準をビッド(顧客側から見た売値)とした逆指値です。つまり、市場のビッド(売値)が指定レートに達したら、成行注文が執行されるわけです。なので、逆指値が売り注文の場合、ビッド逆指値を使う意味はありません。売り注文はそもそもビッド(売値)を基準にしていますから。逆指値が買い注文のときに、ビッド逆指値を使う意味が出てくるわけです。話しがややこしいですが、つまりはこういうことです。

   ふつう、買い注文はオファー(顧客側から見た買値=高い方のレート)を基準にして執行されます。しかし、何らかの要因でビッドとオファーのスプレッドが大きく開いた場合を考えてみてください。例えば、ドル/円のスプレッドが普段は2銭なのに、20銭に開いたとしましょう。そして今、109.90−110.10円がついています。普段なら109.99−110.01円です。もし売り持ちしていて110.10円に逆指値(=買い)を入れていたら、普段なら引っかからないのに、このときは執行されてしまいます。そういうときにビッド逆指値にしておけば、ビッド(売値)=低い方のレートが基準になるので、引っかからずにすむわけです。

   ビッド逆指値で注意が必要なのは、執行の基準はビッド(売値)ですが、実際に約定するレートはビッド(売値)とは限らないことです。買いの逆指値をビッド逆指値で行った場合、執行基準はビッド(売値)でも、約定はオファー(買値)になります。上の例では、さらに相場が上昇して110.10−110.30円になると、売値(ビッド)が指定レートに達するので逆指値が執行されますが、約定レートは110.30円です。ふつうの逆指値よりも、執行された場合の損失が拡大してしまうのです。ビッド逆指値は、思わぬスプレッドの急拡大で、損切りが執行されてしまうことを避けられます。しかし、いったん執行されてしまうと、その悪影響を受けてしまうわけです。

アスク逆指値注文の使い方

   アスク逆指値は、注文の執行基準をアスク(顧客側から見た買値。オファー)とした逆指値です。つまり、買値が指定レートに達したら、成行注文が執行されるわけです。なので、逆指値が買い注文の場合、アスク逆指値を使う意味はありません。買い注文はそもそもアスクを基準にしていますから。逆指値が売り注文のときに、アスク逆指値を使う意味が出てくるわけです。話しがややこしいですが、つまりはこういうことです。

   ふつう、売り注文はビッド(顧客側から見た売値=低い方のレート)を基準にして執行されます。しかし、何らかの要因でビッドとアスクのスプレッドが大きく開いた場合を考えてみてください。例えば、ドル/円のスプレッドが普段は2銭なのに、20銭に開いたとしましょう。そして今、109.90−110.10円がついています。普段なら109.99−110.01円です。もし買い持ちしていて109.90円に逆指値(=売り)を入れていたら、普段なら引っかからないのに、このときは執行されてしまいます。そういうときにアスク逆指値にしておけば、アスク(買値)=高い方のレートが基準になるので、引っかからずにすむわけです。

   アスク逆指値で注意が必要なのは、執行の基準はアスク(買値)ですが、実際に約定するレートはアスク(買値)とは限らないことです。売りの逆指値をアスク逆指値で行った場合、執行基準はアスク(買値)でも、約定はビッド(売値)になります。上の例では、さらに相場が下落して109.70−109.90円になると、買値(アスク)が指定レートに達するので逆指値が執行されますが、約定レートは109.70円です。ふつうの逆指値よりも、執行された場合の損失が拡大してしまうのです。アスク逆指値は、思わぬスプレッドの急拡大で、損切りが執行されてしまうことを避けられます。しかし、いったん執行されてしまうと、その悪影響を受けてしまうわけです。

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