大勢順張り・小勢逆張り
順張りと逆張り
「大勢順張り・小勢逆張り」はFXの基本方針としては当サイトが最も推奨する手法です。ご承知のとおり、順張りは相場が上昇中なら素直に買い方針、下降中なら素直に売り方針で臨む手法。逆張りは、相場が高くなるのを待って売り、相場が安くなるのを待って買うという手法です。一般的に言って、順張りのほうがリスクは低いのですが、逆張りのほうが当たったときは儲けが大きくなります。どちらの手法も一長一短なので、最善の売買手法は両方をうまく組み合わせること。それが「大勢順張り・小勢逆張り」です。このページではその具体的な方法を解説していきますが、まずは各手法の問題点を整理しておきたいと思います。
逆張りの危険性
中長期スタンスで取引を行う投資家は、安いところを拾って値上がりを待ちたいと考えるので、基本的な姿勢は逆張りの傾向があります。リーマンショックの後に株価が大幅安となったとき、個人投資家の口座開設が急増したのはその現れです。しかし、この行動には注意すべき点があります。それは『値ごろ感』が買い出動の背景にあることです。もちろん、バリュエーション評価で買い時と判断した方も多いと思いますが、多くの方は「こんなに下がったのなら買い時だ」と感じたことが最大の理由ではないでしょうか。
しかし、この値ごろ感というのは相場の大敵です。市場が悲観的になっているところへさらに追い打ちをかけるような弱材料が出ると、「まさかこんなに下げるとは」という水準まで下げます。「半値8掛け2割引き」という言葉がありますが、市場が不安心理に支配されたときは底値の目処などないのです。現物株ならそうなっても塩漬けを覚悟すればよいのですが、証拠金取引であるFXではそうはいきません。想定もしなかった大損を被ることになります。
東京金融取引所が公表しているクリック365の取組みを見ても、一般投資家が逆張りを好む傾向がうかがえます。サブプライム問題が表面化する以前は、豪ドルやニュージランドドルなど人気の高い通貨は、値下りすると買い玉が増加し、値上りすると利食い売りで取組みが減るというパターンを繰り返していました。相場が上昇トレンドにあればそれは最高の作戦ですが、相場が一旦逆回転し始めると、最悪の作戦ということになってしまいます。
逆張りとテクニカル分析
個人投資家が逆張りを好むのは、RSIやストキャスティックなどのオシレーター系のテクニカル分析によるところも大きいように思えます。テクニカル分析の解説では「RSIが30%以下になったら売られ過ぎのサインだから買いのチャンス」などと書かれています。分かりやすい説明ですし、確かにそうなることも少なくはありません。しかし相場はそんなに単純ではなく、RSIが30%を割ってから下げ足が速まることもざらにあります。例えば上図では、Aのポイントで20%程度まで下げていますが、その後も為替相場は下げ続けています。この間、RSIは横ばい状態です。一方、Bでは75%越えで建玉すると目先の天井で売ることができます。ただ、ほどなく反転して(元のトレンドに戻って)新高値を更新する結果になっています。
テクニカル分析だけに頼って逆張りをしていると、何回か連続で勝ったとしても、はずれたときに大きくやられたりします。「もうそろそろ反発するはずだ」と考えて損切りの決断を先延ばしにしてしまうからです。もちろん、損切りがきちんとできるのであれば、こうした逆張り手法も有効な手法になりえます。しかし、初心者のかたにはお勧めでできないというのが正直なところです。
順張りの問題点
先に逆張りの危険性について整理しましたが、順張りにも大きな落とし穴があります。それは、へたな売買をすると天井圏で買い底値圏で売ってしまうことです。FXでこれほど悲惨なことはありません。相場は熱狂の中で天井を打つと言われるように、誰もが買い安心感をもつようになったとき、そこが天井になるわけです。また、相場の山谷が小さいときやボックス相場のときは、買っては下がり、損切りをすると反発するという悪循環に陥ってしまうことがあります。昔の言葉で言うとちゃぶつくという状態です。はたまたトレンドを追い過ぎて結局は利益を失ってしまうということもあります。
大勢順張り・小勢逆張りこそ最善の手法
こうして見ると相場は実に難しいものです。しかしそこはやりかた次第。上に書いたような落とし穴を避けながら、逆に各手法の長所を生かす方法があります。それこそが「大勢順張り・小勢逆張り」なのです。これはその名のとおり、基本的に売買方針は順張りで臨み、建玉のタイミングでは逆を張るという方法です。昔から相場の格言に『週足には逆らわず、日足には逆らえ』というのがあります。週足をみて上げ基調なら買い方針とするが、実際に買うのは日足が下げたときという意味です。週足と日足が日足と時間足の組み合わせになってももちろん同じです。
建玉タイミング
では具体的な建玉タイミングの測り方について解説します。まず大勢の判断ですが、これはさほど難しくないでしょう。大抵はチャートを見た印象で判断できると思います。基本的な見方は、相場の山と谷が切り上がっていれば上昇トレンド、切り下がっていれば下降トレンドです。またトレンドが転換したと判断したら、次に反転したと判断するまで、その方針を維持するという考え方もあります。トレンドの転換を判断する方法については前のページ「トレンドの転換を判断する方法」をご参照ください。大事なことは、トレンドがない場合もあるので無理に判断せず、迷ったら様子をみることです。
大勢を判断したら、今度はその調整場面を迎えた時に出動することになります。例えば大勢が上昇基調であれば短期的に下げている場面で買うわけですが、どこまで下がったら買い出動すべきか。判断の基準になるのは移動平均とオシレーター系のテクニカル分析です。ただし何か相場の方向を変えるような材料が出て下げている場合は別です。その時は手を出してはいけません。短期間の調整で終わるのは、利食いなど相場の循環で下げている局面です。
1.移動平均系による仕掛け
移動平均については過去の値動きを検証して支持線となっている移動平均を3〜5本程度利用します。例えば25日、50日、75日といった具合に(もちろん日が時間や分になってOKです)。そしてタイミングを分散しながらポジションを構築していきます。つまり1本目を割った時点で予定建玉の三分の一、2本目を割ったらさらに同数量を建てます。ただし3回目を建てたとしてもそこで満玉にしてはいけません。資金には余裕を持たせるべきです。
2.オシレーター系による仕掛け
オシレーター系についても同様です。どの分析手法を使うかは好み次第で良いと思いますが、どれを使うにしても、自分でパラメータの設定を変えて試してください。そしてなるべく有効な設定をみつけましょう。例えば、RSIは一般的には14日が用いられますが、小勢逆張りで使用するなら、9日などもう少し短期の設定がよいかもしれません。またオシレーター系を使う場合も、分析数値が目標値まで下がったら、そこから分散して建玉していくようにします。分散方法としては移動平均を併用したり、単純に値幅で設定してもよいでしょう。あるいはそのオシレータ系分析が2番底、3番底をつけたタイミングも候補になります。
利食いのタイミング
利食いはこまめに確実に行うことが肝要です。FXは取引コストが安いので、分単位の取引でもコスト負けになる懸念がほとんどありません。ましてや時間足や日足なら無視できるレベルです。一方、同じ順張りでも大きなトレンドにとことん乗ることを狙う手法もあります。しかしここで言う「大勢順張り・小勢逆張り」の手法はそれとは別の手法と考えてください。当サイトでは便宜的にそうした手法を「トレンドフォロー」と呼んで区別しています。詳しくは次のページをご覧ください。
利食いのタイミングとして候補になるのは、一つにはオシレター系のテクニカル分析を利用することです。ある程度高くなったら(あるいは低くなったら)、あまり欲をかかずに確実に利食うことをお勧めします。ただ、基準が曖昧という面がありますので、そうした点を回避したい方むけに、固定式の手法をご紹介しておきます。
1.ターゲット固定式とは
相場をやっていれば、ロスカット(損切り)に踏み切れず損を広げてしまった経験は誰にもあると思います。一方、利食いが早すぎてもったいないことをしたという経験も多いはずです。「損切りは遅め、利食いは早め」という傾向は多かれ少なかれ誰にでも備わっているものですが、本能みたいなもので克服するのは非常にやっかいです(参考記事:FXの必勝法)。
そこで有効な方法が、建玉した時点で利食いと損切りの注文を入れてしまうことです。ある意味、馬券を買うような感覚で、ポジションを持ったらあとは結果を待つのみというスタイル。原則として途中で指値を変えたりはしません。これがターゲット固定式の売買です。ポイントは利食いと損切りの幅をどう設定するか。利食い幅のほうを大きくするという選択もありますが、同じ幅にすることを推奨します。ただし、短期売買の場合には、スプレッドというハンデがありますから、あまり小幅に設定することは避けなければなりません。
2.ターゲット固定式の例
ドル/円を例にとって考えてみましょう。仮にスプレッドが1銭で、現在値が99.99−100.00とします。ここで買い建てた場合(建値=100.00)、利食いのターゲットを30銭にすると、100.30−100.31の時に利食えることになります。つまり、相場自体は31銭値上がりする必要があるわけです。一方、損切りも利食いと同様に30銭に設定すると、99.70−99.71で損切りとなるので、建値から29銭逆行した時点です。方や31銭、方や29銭ですから、これは結構なハンデです。ではターゲットを1円にするとどうでしょう。同様に、方や1円1銭、方や99銭の値動きでヒットするわけですが、この程度なら大きな差ではないと思います。ターゲット固定式では、基本的に1%以上の値動きに設定すべきでしょう。
さて、このやりかたでは、1勝でも勝ち越せば利益が残ります。相場を全て当てることは不可能ですが、6:4で当てることができれば2勝勝ち越せます。7:3の確率なら4勝も勝ち越せます。相場で勝てない人の中には、そこそこ勝率は悪くないんだけれども、たまに大負けするのでトータルすると損をしているというパターンの人が結構います。「利食いは早め、損切りは遅め」という傾向から抜け出ることができない人たちです。このての人は、ターゲット固定式を試してみるとよいかもしれません。
損切のタイミング
最後に損切について解説しておきます。損切すべき状況には以下のケースがあります。
- 支持線とみた移動平均線を割り込んだあと数日たっても回復してこない
- RSIが50%を割り込んだあと数日たっても回復してこない
- 安値が前回の安値(相場の谷)を下回ってきた
- 直近の高値から一定の比率以上に下げてきた(時間足や日足によって設定は異なります)
上記の現象が複数起これば損切を行うべきですが、判断に迷ううちにズルズルとタイミングを逃してしまうことがあります。これはメンタルの問題であり、相場で最も難しい場面と言えます。メンタル面で自信のない人は、上でも書いたように、あらかじめ逆指値注文を入れておくことを強くお勧めします。損失が一定金額以上に達したら相場の動きとは関係なく損切るという方法も有効です。次で損失を取り戻すための十分な軍資金を残すようにするわけです。例えば資金の10%を失ったら決済するという具合に。結局、相場で勝てるかどうかはこの場面の対応次第と言っても過言ではないでしょう。
なお「大勢順張り・小勢逆張り」のよい点は、たとえ損切しなければならなくなっても、傷が浅くてすむことです。相場は小さな山と谷の連続なので、トレンドが転換しても戻り場面で損切すれば大損はありません(もちろんその前に損切ルールに抵触すれば迷わず損切します)。また、大勢順張り・小勢逆張りで安全性をより高めたいのであれば、相場の波動が若いときを狙うことです。大勢が転換した後の最初の谷または山を狙うのです。勝率は確実に上がります。もちろん、日足だけでなく分足や時間足から週足・月足まで幅広く観察してそうした局面を見つけるようにします。
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